
「箱が開いたとき『こんにちは』って言うんやでと、ケーキたちに言い聞かせます」
手づくり市からスタートした、チーズケーキ店。
京都ベイクドチーズケーキドットコム 店主 古賀みどり
■ケーキを作るために生まれた生き物
食通で鳴らすライターUは、京都ベイクドチーズケーキドットコムのみかんのチーズケーキに驚いた。口にした瞬間、果樹園とのどかな青い海が一瞬見えた。コクのあるチーズにしっかりとした酸味のバランスが絶妙。みかん畑へ連れ出してくれるチーズケーキなんて、初めてだ。
「おいしいでしょう? 愛媛にある無茶々園の無農薬みかんを皮ごと、みかんの絞り汁にして淹れてますから」。
まるで太陽のような、丸い笑顔で話すのは、店主の古賀みどりさんだ。

■修行から宅配、百万遍手づくり市へ
佐賀県出身の古賀さん、実家は臨済宗のお寺だ。4人姉妹の末っ子、小学生のときからケーキ作りが好きだった。1989年、21歳のときに親が洛北圓光寺に住持することになり、京都へ来た。
「自転車に乗って北山から北大路のケーキ屋さんをめぐりました。出会ったのが平川風月堂のシュークリームです」。
なんとしてもこの味を習得したいと貪欲な思いで、平川風月堂の門を叩く。3年半勤めた後、幻の名店といわれるリアルジャムでさらに学ぶ。99年、32 歳のときに「店もないのに」、自宅で起業する。
当初は、自宅で注文を請けて、作って配達をするスタイルだった。翌年、33歳で百万遍の手づくり市に出店したところ、売切れ御免の人気商品となる。
「お客さんがチーズケーキを口にされたとき、パッと表情が変わるのを見るのが好きでした」。
実は手づくり市出店前に、下鴨で米屋を営む山下幸徳さんに出会う。山下さんは古賀さんのケーキをこう評する。
「普段ケーキを食べない大人の男性をも魅了する。1個全部食べ切っても、もう1個食べたい気にさせる」。
山下さんは、古賀さんの才能に惚れ込み、ビジネスパートナーとなる。山下さんの実家が無茶々園だった縁で、冒頭のみかんチーズケーキは生まれた。そして2007年、古賀さんはここ北山にベイクドチーズケーキドットコムを構えた。

■ケーキのことだけ考えて ひたすら作り続ける
古賀さんの頭には、ケーキのことしかない。結婚をして子どもを作る、そんな人生もあるが彼女の幸せは違う。店の収支や材料の原価率は山下さんに任せ、繁忙期には店で寝起きし、ひたすらケーキをつくり続ける。凡人にはこの感覚で仕事に取り組むことは到底できない。市販のスライスを使わず一心不乱にアーモンドを刻む古賀さんは、まるでケーキを作るために生まれた生き物のような、迫力がある。
古賀さんにとって、ケーキは自分の子ども同然。「箱が開いたとき『こんにちは』って言うんやで」とケーキたちに言い聞かせて、お客さんに大切に手渡す。
少女的であり、同時に動物的。ひとつのものにこれほどまで没頭できる古賀さんだからこそ、みかん畑の風が吹くような、チーズケーキが作れるのだろう。
(2018年5月10日発行ハンケイ500m vol.43掲載)

京都ベイクドチーズケーキドットコム
▽TEL:0757418712
▽営業時間:10時~19時
▽定休:水、木(不定休有り)

