<出会う>京都のひと

「自分なりのお気に入りを見つける。そのお手伝いができれば最高」

少量から焙煎できる。会話が弾むコーヒースタンド。

AOI COFFEE 店主 鬼追善久

■専門店ぶらない、押し付けない

京都コンサートホールの北斜向かいにある、間口半間ほどのコーヒースタンド。陽光射しこむ対面式で、注文を訊いてから一杯ずつ丁寧にハンドドリップされる。葵祭ゆかりの葵学区にちなんで、アオイコーヒーと名付けたのは店主の鬼追善久(きおい・よしひさ)さんだ。

「葵は古語で『逢日(あふひ)』。そのことばにあやかり、すてきな出会いができますようにと店名にしました」。

ハンドドリップで淹れた本日のコーヒー380円、店内で飲んでも、テイクアウトでもOK。

■IT業界からの転身、きっかけは熱風式焙煎機

店主の鬼追善久さんは大阪羽曳野出身。京都産業大学に進学するも、「早く社会に出たい」と在学中から祇園で働き始めた。IT業界で起業し、WEB制作を手がけていた鬼追さんは、31歳のときにダイイチデンシの社長と知り合う。制御盤といった特殊機器を扱うメーカーが、開発したのが熱風式の自動焙煎機だった。

「直火焙煎だと、どうしても焦げ臭さがあるのに対して、熱風式なので味わいがクリア。香りが違います」。

耐熱ガラスのなかを舞う豆が、どんどん色づいていく。そんな熱風式が得意なのは少量焙煎だ。毎秒単位で温度をコントロール、たった100gから、好きな具合に仕上げられる。

「所要時間は10分ぐらい。自分好みの珈琲豆を注文して仕上がるあいだに、近所で買い物して、煎りたてを持って帰る。そんなふうに豆を買ってくださる、ご近所にお住まいの方も増えてきました」。

カスタマイズされた熱風式の焙煎機は、少量の豆を必要な分だけその都度焙煎するので鮮度抜群。店頭でドリップされる豆も、 販売用も、1週間過ぎたものを使うことはない。

■フランクに話して、ぴったりの豆と出会う

アオイコーヒーを始めて3年。世間に流通している豆とは一線を画し、産地と製法を熟知した品揃えでありながら、鬼追さんは専門店ぶることを嫌う。

「お客様に応じて、いろんな好きがあっていい。苦手なのは自分の好きを押し付ける、視野の狭いコーヒー屋です」。

アオイコーヒーでは、フランクに客人と会話ができるのが楽しい。味の好みを訊いて、常時10種類ほどあるコーヒー豆からお客さんにピッタリ合う豆を提供できれば嬉しい。

「コーヒーは淹れ方によって味が違うので、ご自宅で自分なりに試してみて、お気に入りを見つけてもらえたら。またそのお手伝いができれば最高ですね」。

コーヒーに魅せられた人たちが集まる。

ちなみに、鬼追さんの好みは、エチオピア・イルガチェフG1だ。

「88℃ぐらいでハンドドリップするのですが、こんな花のような香りのコーヒーがあるのかと衝撃でした。さらに一滴ずつ水出しすれば、ドリップより濃くなって、もっと芳醇な香り、ワインみたいになるんです」。

鬼追さんのコーヒーの談義は愉し気だ。思わず引き込まれてそのコーヒーを飲んでみたくなる。客も「私のお気に入り」を鬼追さんに伝えたいと、話が弾む。

まさに「逢ふ日」コーヒー。その名の通り、まだ見ぬお気に入りの味との出会いがある、コーヒースタンドだ。

(2018年5月10日発行ハンケイ500m vol.43掲載)

鬼追さんは各地のイベントでコーヒー講習の講師も務める。

AOI COFFEE

京都市左京区下鴨前萩町5木村ビル1F

▽TEL:0757080202

▽営業時間:11時~18時

▽定休:火