きょうの挑戦者たち

金継ぎや植樹を通じて漆を中心としたつながりづくりに挑戦し、漆の魅力を次世代に伝える

■清水愛さん
京都府亀岡市出身。大学卒業後、一般企業に就職するが、人間国宝音丸耕堂の作品に衝撃を受け漆芸の世界へ。京都市内の工房で腕を磨き、2008年独立して漆器の創作活動を開始。2015年、金継ぎ(きんつぎ)のブランド「urujyu(ウルジュ)」を立ち上げ、金継ぎ教室を開始。出産・子育てと両立できるスタイルを模索し、2020年京都府美山へ。漆に対する熱い思いが注目を集めている。

「金継ぎ」は器の傷を漆で接着し、金粉などで装飾する技術だ。傷を愛しい歴史として美しく生まれ変わらせ、使い続ける。今、金継ぎを日常の器にも施すことが、モノを大切にするエコロジーの観点から注目されている。
実は、金継ぎは日本の伝統技術だ。古くは桃山時代、京都で生まれた茶の湯文化で発達し、高価な茶道具の補修で知られる。

金継ぎによって、日常の器が華やぎとともに再生する。「urujyu」での活動を通じて日本そして海外に金継ぎの魅力を伝えている。「愛が人をつなぎ、傷ついた心を癒し、再び歩み出す希望をくれるものなら、漆と金継ぎは愛そのものだと思います」と清水さん。

美山で活動する漆工芸作家・清水愛さんは、2015年から「urujyu」のブランド名で、教室を通じて金継ぎの技術を伝える活動に力を入れている。
「接着剤にもなる漆は、塗装の仕上がりも美しく、木材や陶器の充填材にもなる素晴らしい素材です。漆は私の人生にとってかけがえのないもの。漆の技術を多くの方に伝えたい」。
特筆したいのは、清水さんが、自身で美山に漆を植林していることだ。素材の大半が海外産の現状に違和感を持っていた清水さんはクラウドファンディングを利用し、長年の夢を実現した。
「漆を植えてくれた先人たちへの感謝もあります。自分がこれから使う漆、次世代に受け渡す漆を、自分で育てたいのです」。

風の吹き抜ける工房の目の前に、2020年に植えられた漆の木。植樹2年目の春、芽吹いている。「樹液が取れるようになるまで10年。その頃には子育てもひと段落しているでしょう。それまで大切に育てていきます」。

金継ぎ教室や植樹。清水さんは、漆をめぐる動きがつながる過程を楽しんでいる。たとえば教室の生徒が独立して、別の地で金継ぎを教えると、漆のファンが増える。土地を借りて漆を植える代わりに草刈りを負担すると、人間関係が生まれる。
「今は、漆を中心としたつながりをつくる挑戦の最中です」。
精力的な清水さんの活動を通じて、漆の魅力を伝える輪は着実に広がっている。その先にあるのは、漆の価値が正当に評価されて、漆器と金継ぎの文化が次世代に受け継がれていく未来だ。

(2022年5月10日発行ハンケイ500m vol.67掲載)

<共同編集長コラム>
骨董市やガラクタ市の雰囲気が好きで、時間を見つけてはちょくちょく、訪ね歩いています。有名な東寺の「弘法市」、北野天満宮の「天神市」はもちろん、平安神宮前の岡崎公園で開かれる「平安蚤の市」など。普段の暮らしの中で骨董やアンティークに親しむ機会が多いのは、京都という街の特徴のひとつかもしれません。並べられた陶磁器の数々を手に取ると、時々、「金継ぎ」が施された器に出会います。人の手が生み出し、人の手が使い、人の手で修復された「金継ぎ」。表面に伸びる金色の曲線は柔らかな葉脈を思わせ、その器がつないできた時間の流れを物語るかのように仄かな光を放ちます。金継ぎ教室や漆の植樹から、新たなつながりを作ろうと挑戦を続けている「urujyu」の清水愛さん。手から手へ、金継ぎを通して人をつなぎたい−。清水さんの思いが、新しい風に乗って広がっています。(龍太郎)

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漆を中心としたつながりづくりを目指し、漆の魅力を次世代に伝える清水愛さんの挑戦と同様に、三洋化成も、化学のちからで化学の枠を超えてイノベーションを起こし、持続可能な社会づくりに挑戦しています。

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