「居間のように使ってほしいです。カフェはお客さまのものでもあるから」
京町家でオーストラリア人が営むカフェ。
JAM JAR オーナー ダニー マセソン
■僕にとって日本はグッドライフ!
まるで海外の雰囲気、なんともいえない心地よさで選ぶなら「ジャムジャー」だ。カウンターで、コクのあるコーヒーを淹れてくれるのはダニー・マセソンさん。京都に来て5年になる。
■5歳で町家に憧れ。新天地を求めて京都へ
オーストラリア出身のダニーさんは、京町家に思い入れがある。
「子どものときに日本を紹介する絵本で町家を見て、美しいと思いました」。
日本の子どもが西洋の古城に憧れる感覚だろうか。旅行好きが高じて、ダニーさんは21歳で世界各地に移住する。まずは「歴史に惹かれて」ロンドン、次に「毎日が新しくてエキサイティングな」東京、そして「オーストラリアについて知りたくなって」メルボルンへ。32歳のとき旅行会社に就職。営業、人事等の仕事を経て、44歳のときにメルボルンでカフェを開いた。その後タスマニアに移り住み、そこでまたカフェをオープン。経営は順調だった。
「でも、順調すぎてつまらなかった。新しい挑戦がしたくなったんです」。
50歳のとき、オーストラリアの常連客に閉店を惜しまれながら選んだ新天地は、ここ京都の北野白梅町の町家だ。「働いて住めてしかも美しい町家は、ビジネス面でもクレバー。京都の人は町屋に住むのがあまり好きじゃないでしょう? それはチャンスがあるってこと。西陣にはまだ町家がたくさん残っている。日本中にもこんなところはありません」。
初めて上七軒の芸妓さんが遊びに来てくれたときはエキサイティングだったよ、とダニーさんは振り返る。
■町家を改装して。理想のカフェを実現
築100年以上の町家を改築し、20世紀のアールデコヴィンテージをイメージした家具はオーストラリアから運び込んだ。コーヒーメーカーもタスマニアのカフェで使っていたものだ。流す音楽はジャズ。たくさん本が置いてあり、夏も冬も快適な温度。ジャムジャーは、ダニーさんの理想のカフェだ。
「カウンターで絵を描いてくれるお客さんや、ギターを弾いてくれる人がいてカフェは完成する。マンション暮らしの人に、居間のように使ってほしいです。カフェはお客さまのものでもあるから」。
ブレックファーストをはじめ、メインのメニューはメルボルンのときと変えていない。日本に来て増えたメニューは抹茶ラテ、そして梅酒。
「日本は犯罪も少ないし、大半の人がフレンドリー。医療も充実しているし、天気だってメルボルンと比較して悪くない。友達もいるし、ご近所さんとスタッフにも恵まれた。日本はグッドライフ!」。
ダニーさんは住む場所、仕事、仲間。人生の選択に心から満足している。そんな感覚が、このジャムジャーの居心地のよさに反映しているのだろう。
(2020年5月10日発行ハンケイ500mvol.55掲載)
JAM JAR
▽京都市上京区今小路通七本松西入ル2丁目 東今小路町758-2
▽TEL:0752048508
▽営業時間:10~17時
▽定休:月
最寄りバス停は「北野天満宮前」