Ki-Yan 今日的琳派

象 -Smiling Elephants-

京都の木屋町松原、鴨川の辺に新しいスタイルのブライダル事業を展開する「リバー・オリエンタル」が出現する。そのオーナーの野田豊君を紹介される。彼は非常に判断の早い男だった。私が描いた犀の壁画の資料を見るなり、「絵が描ける壁が2カ所ある」と、早速に私を案内した。左右15m、高さ3mの大壁面とそこに通じる廊下の壁面だった。

ロックの殿堂として伝説化した京大西部講堂で、私は「モジョ・ウエスト」というロックライブをプロデュースしていた。そのヴイジュアル・シンボルが、交尾するエレファント、象だった。私にとって象は身近に親しめる動物となっていた。

非常にシンプルだった。「リバー・オリエンタル」という店名に象がストレートに結びついた。私の中に、象の群れを操り戯れる象使いたちの様子が浮かんできた。「リバー・オリエンタル」の東側には鴨川が流れている。象の群れが、水浴びをしようと鴨川に向かう。直感的なそのイメージを、野田君に案内された大壁面に描いた。

何故か、象たちは笑っていた。「Smiling Elephants」がタイトルになる。2002年のことだった。

(文/木村英輝、写真/FLYING HIDEKI PROJECT)

※「THE RIVER ORIENTAL」は2007年に閉店のため、現在は壁画はありません。

京都の街に極彩色の壁画を描き続けるロックな壁画絵師・キーヤンこと木村英輝さん。「本物しか描かない」を信条に数々の動植物をモチーフとした壁画を手掛けるキーヤンが、アートに込める思いを語ります。

Ki-Yan 木村英輝

1942年大阪府生まれ。京都市立美術大学図案科卒業後、同大講師を務める。
日本のロック黎明期にオルガナイザーとして数々の伝説的イベントをプロデュース。
還暦より絵師に。「究極のアマチュアリズム」を標榜し、京都を拠点に活動し、手がけた壁画は国内外で200カ所を超える。
作品集に『生きる儘』『無我夢中』『LIVE』など。

▽木村英輝キーヤン オフィシャルサイト⇒https://ki-yan.com/