〈Ki-Yan 今日的琳派〉

鯉 -Carp is Dragon in Heaven-

龍が好きな人は多い。「龍を描いて欲しい。」と、よく言われる。特に辰年には、たくさんの依頼があった。とは言え、龍は想像上の動物。見たことがないので、描くとなると、先人達の龍にまつわる資料を解釈し、模写するしかない。折角、注文を頂いたのに残念ながら、断るしかなかった。

そんなことが続いた頃、私は、黄河の急流を駆け昇った鯉は龍になるという中国の故事に出会った。

壁面に描かれた鯉。湧き出るようなエネルギーに圧倒される。(京都市中京区・ゼスト御池地下街)

それならと、宝ヶ池の鯉をスケッチに出かけた。宝ヶ池の鯉は、半分野生化している。撒き餌のパン屑を投げると50~60センチほどの鯉たちが、重なり合って集まってくる。凄いエネルギーだ。大きく開く、その口は何でも飲み干す勢いだ。中国の故事にある、滝を登り龍になったという鯉そのものだ。

「Carp is Dragon in Heaven」

天国に登る鯉は龍になる、というタイトルを付けて、龍に変わって鯉を描くことにした。壁面を悠々と泳ぐ鯉は、以後、私の代表作のひとつとして多くの場所に描いてきた。2012年には広島東洋カープのホーム球場であるマツダスタジアムで、赤い鯉だけで構成した壁画も手掛けた。

広島東洋カープのため、108匹の赤い鯉で構成したマツダスタジアムの壁画(広島市南区)

京都市中京区のゼスト御池地下街の広場にも、鯉の壁画がある。御池通りの名前の由来となった神泉苑にちなんだものだ。京都の街の中心を走る御池通りの地下には、青龍の方角である東の空に向かう鯉たちが、今日も泳いでいる。
(文/木村英輝、写真/FLYING HIDEKI PROJECT)

京都の街に極彩色の壁画を描き続けるロックな壁画絵師・キーヤンこと木村英輝さん。「本物しか描かない」を信条に数々の動植物をモチーフとした壁画を手掛けるキーヤンが、アートに込める思いを語ります。

Ki-Yan 木村英輝

1942年大阪府生まれ。京都市立美術大学図案科卒業後、同大講師を務める。
日本のロック黎明期にオルガナイザーとして数々の伝説的イベントをプロデュース。
還暦より絵師に。「究極のアマチュアリズム」を標榜し、京都を拠点に活動し、手がけた壁画は国内外で200カ所を超える。
作品集に『生きる儘』『無我夢中』『LIVE』など。

▽木村英輝キーヤン オフィシャルサイト⇒https://ki-yan.com/