<出会う>京都のひと

「十条は人と人のつながりが強い街。愛される店、愛されるスタッフでありたい」

京都のブルックリンを目指す薪火グリル料理店。

Kyoto Food HUB & LABO 店長 立岡裕哉

■「美味しい」だけじゃなく「楽しかった」が嬉しい

ハブは「つなぐ」、そしてラボは「研究所」。昨年の4月、革新的な場、通称「京都ハブラボ」が誕生した。薪火グリルを使った料理を供するレストランであるが、単なるイマドキな店ではない。

ニューヨークに10年以上と海外生活の長いオーナーが目を付けたのが、十条というエリアだった。

焼き縮みが少ないのが薪火の特長。肉汁 をたっぷり含んだ、柔らかな食感に驚く。 リブリースのステーキ。バルサミコとパル ジャーノ。200g2,600 円~。薪火オーブン 料理以外にも前菜やパスタも。ランチもス タートした。

■十条を京都のブルックリンに

京都駅を挟んで南と北。八条をイーストリバーに見立てるならば、開発著しい北がマンハッタンで、南は可能性を秘めたブルックリン。食を通じ、十条を現在のブルックリンのようなクリエイティブな街にしたい――。そのために必要な「街と人をつなぐ」ための場所づくりが、「京都ハブラボ」の真のコンセプトだ。

「うちのメインは人」。笑顔あふれる好漢揃いのスタッフを束ねるのが、店長の立岡裕哉(ひろとし)さん。飲食に従事し、ピザ職人を目指してイタリアに渡った経験もある。京都でも珍しい薪火グリル料理に惹かれ、同店のドアを叩いた。

「店長になって間もないですが、日に日に活気が増して、どんどんよくなっている。愛される店であり、愛されるスタッフでありたいです」。

実はこの店、とってもスタッフの仲がいい。阿吽(あうん)の呼吸で繰り広げられる接客は眺めていて惚れ惚れするし、なによりこちらまで楽しくなってくる。

「飲食は、その場でお客さんの反応が返ってくるのがおもしろい。僕は料理経験もありますが、実は、元々は接客がしたくてこの業界に入ったんです。飲食業自体が好きなので、役割がなんだろうが、そこは関係ない」。

そんな彼の想いが反映されてか、訪日の外国人観光客から地元の家族連れまで、ゲストの層は厚い。

「地元のお客さんが『いっぱい宣伝しとくわ』って。十条はいい意味で田舎なんです。人と人のつながりが強い街だと思います」。

グリルで薪火を操る谷古宇(やこう)祥平シェフ。赤い炎で肉の塊を包み込むように焼く。

■イベントやコラボで日々進化する場所

立岡さんの定位置で店を見渡すロングカウンターには、ひとりの時間を楽しむゲストも少なくない。また来てもいいですか?と問われれば「喉が枯れるまで話します!」と弾ける笑顔付きで。

「うちのシェフは料理に妥協がないので、『美味しい』という感想は当たり前だと思っています。それに加え最近は、『楽しかったです』と言っていただけることが多くて。それが嬉しいです」。

通常営業だけでなく、ゲストバーテンダーを迎え、コラボカクテルを創るイベントも毎月開催。2階はレンタルスペースになっており、さまざまな表現を可能にする場として開放している。

あらゆる人を巻き込んで、日々進化する「ハブラボ京都」。十条をブルックリン化するという野望を、じわじわと街に広げていくに違いない。

(2018年9月10日発行ハンケイ500m vol.46掲載)

元は資材置き場だった空間。内装は全てスタッフたちによるD.I.Y。

※現在は閉店しています。店舗に関する情報はハンケイ500m掲載当時のものです。

Kyoto Food HUB & LABO
京都市南区東九条南河辺町57-3