ヤノベケンジの世界から語る現代アート

おにクル✖️シップス・キャットプロジェクト

大阪府茨木市に2023年11月、文化・子育て複合施設「おにクル」がオープンした。「育てる広場」をキーコンセプトとして、地上7階建ての建物に図書館やホール、子育て支援センター、芝生広場などの施設が集積している。市内中心部の市役所横に立地し、建築家の伊東豊雄氏が手がけた。おにクルでは3月10日まで《SHIP’S CAT ONK-1》《SHIP’S CAT ONK-2》の2体が展示されているほか、3月2日からは《SHIP’S CAT (Speeder)》も加わり「SHIP’S CAT展」が開催される。

茨木市はヤノベケンジの出身地であり、《サン・チャイルド》が恒久設置されている街でもある。おにクルの計画を知ったヤノベは「茨木市の、文化に対する思いが詰まった施設。ぜひ僕も関わりたいと思った」という。新たな街のランドマークの門出を祝う意味も込め、大航海時代に貨物や船をネズミから守り、世界中を旅した船乗り猫である《SHIP’S CAT》を新たに制作し、展示することに決めた。茨木市文化振興課の担当者は「行政だけでなく、住民や団体など多様な方とつくり上げていくことがコンセプトのおにクルでは、コンサートや講演会をはじめ、日々さまざまな出来事が起こっています。美術作品というと特別なもののように思われますが、ヤノベさんの作品は気づけばそこにあるような、日常と非日常のあいだを行き来するような特徴を持っていると感じます」と話す。

おにクルの特徴の一つが、5階と6階を中心として複数の階にまたがる形で図書館が展開されていることだ。子育て支援のフロアである2階には1万冊の絵本をそろえた「えほんひろば」と、大型絵本や紙芝居を楽しめる「おはなしのいえ」を設けた。
「おはなしのいえ」のデザイン監修は、スタジオジブリ作品『耳をすませば』の背景美術に携わった茨木市在住の画家・井上直久氏が担った。実はヤノベにとって、井上氏は高校時代の恩師でもある。
「井上さんは、僕が通っていた高校の美術の先生でした。言うなれば、僕が人生で最初に出会った芸術家。僕にとっては、初めてインプリンティングされたアーティストであり、作品の世界観や絵を描くということに向き合う姿勢など、ものすごく影響を受けました」。

井上氏が「絵本と子どもたちの出会いの場に」という思いを込めた「おはなしのいえ」の屋根の上で楽しげに尻尾を上げた《SHIP’S CAT ONK-1》が、5階の図書館の本棚の上では前足を揃えた《SHIP’S CAT ONK-2》が、それぞれ子どもたちを見守る。故郷である茨木市への思いから始まったおにクルでの展示は、ヤノベ自身のアートの原体験につながる邂逅でもあった。


■おにクル×シップス・キャットプロジェクト「SHIP’S CAT展」
《SHIP’S CAT(speeder)》や、プロジェクト参加学生が制作したイラストなどの制作物を展示します!
日時:2024年3月2日(土)〜3月10日(日)、各日9時〜19時
場所:おにクル1階オープンギャラリー

■トークイベント
現代美術家ヤノベケンジによる講演と、「おにクル×シップス・キャットプロジェクト」についてのトークディスカッションを開催!
日時:2024年3月3日(日)13時〜15時
場所:おにクル1階 きたしんホール
参加:無料/申込不要(当日先着240人)
ゲスト:ヤノベケンジ氏、プロジェクト参加学生など。

【問い合わせ先】
茨木市文化振興課
〒567-8505
大阪府茨木市駅前三丁目8番13号
TEL:0726201810
E-mail:bunka_s@city.ibaraki.lg.jp


▽茨木市文化・子育て複合施設 おにクル
〒567-0888 大阪府茨木市駅前3丁目9
TEL:0726310296

 


ヤノベケンジ

現代美術家。京都芸術大学美術工芸学科教授。ウルトラファクトリーディレクター。1965年大阪生まれ。1991年京都市立芸術大学大学院美術研究科修了。1990年初頭より、「現代社会におけるサヴァイヴァル」をテーマに実機能のある大型機械彫刻を制作。幼少期に遊んだ大阪万博跡地「未来の廃墟」を創作の原点とし、ユーモラスな形態に社会的メッセージを込めた作品群は国内外で高評価を得る。1997年放射線感知服《アトムスーツ》を身にまといチェルノブイリを訪れる《アトムスーツ・プロジェクト》を開始。21世紀の幕開けと共に、制作テーマは「リヴァイヴァル」へと移行する。腹話術人形《トらやん》の巨大ロボット、「第五福竜丸」をモチーフとする船《ラッキードラゴン》を制作し、火や水を用いた壮大なパフォーマンスを展開。2011年震災後、希望のモニュメント《サン・チャイルド》を国内外で巡回。『福島ビエンナーレ』『瀬戸内国際芸術祭2013』、『あいちトリエンナーレ2013』に出展。https://www.yanobe.com/