<出会う>京都のひと

「着ている人にとっての便利さが大事。その人に活用されることに、萌えています」

仕事着としてのシャツを手掛ける専門店。

モリカゲシャツ オーナー 森蔭大介

■誰かのための一枚を作りたい

河原町丸太町の交差点のすぐそば、採光のいいガラス張りの店舗の中には着心地の良さそうなシャツが整然と並んでいる。フォーマル感もありながら「家で洗える日常のシャツ」をコンセプトにしたモリカゲシャツをこの場所で移転オープンさせたのは2006年のことだ。

 

季節ごとに素材や柄・色などが変わる。店内にはメンズもレディースと豊富にある。メンズはオンでもオフでも使えるデザインが施されている。レディースはワンピースも人気。

■シャツをバラして研究 来客を待つ時間

「小さい頃からものづくりが好きで、ジーンズをほどいて筆入れを作ったのは小学生のとき。自作の服を着るようになると『つくってほしい』という人が現れた。人に喜んでもらうことが嬉しかった」。

森蔭大介さんは1970年、京都の生まれ。父の仕事はグラフィックデザイナー。母はミシンが嫁入り道具の世代で、ものづくりは特別なことではなく、日常と地続きにあった。

森蔭さんは20歳まで東京の文化服装学園で学び、アパレルの仕事に就いた。23歳で京都に戻り、97年、三条富小路のビルの一室に店をもった。

「当時、東京は景気が良くて、アパレルも『たくさん作ってたくさん売る』やり方が主流でした。でも、僕は誰かのための一枚を作りたかった」。

そんな思いで京都に戻ったが、宣伝なしで客が来るわけもない。それでも森蔭さんは、待った。その時間は、既存のシャツをバラして型紙を研究する、学びに充てた。そうするうちに、お客さんが訪れるようになった。

「そこでようやく他者に自分の気持ちを伝えないと、と思いました。『ネクタイのいらない仕事着』としてのシャツをオーダーメイドする専門店というコンセプトを決めました」。

パターンオーダー(要予約)は、生地やサイズ、衿の形がボタンなどのディテールを選べる。

■たとえば家で洗濯できる 日常に寄り添うシャツ

森蔭さんが最初に作ったシャツは、エルメスのスカーフを首元にした人からイメージを連想、衿の内側に違う柄を縫いこんだ。衿に差し色の入ったシャツはネクタイがなくても華やいで見える。

「洋服を買う瞬間がスペシャルな『ハレ』で、あとは日常になっていくと思うんです。『素敵だな』と思って、買って帰ってもらったら、その後は、家で洗濯できて、ずっと着てほしい」。

洗濯に耐え、むしろ洗った後の質感がいい素材を選ぶ。「日常着が正装」にという生活者ファーストの考え方には、森蔭さんのものづくりの信念が表れる。

「うちのお客さんにはいろんな方がいらっしゃいます」との言葉どおり、客は老若男女問わない。オーダーシャツの相談に来るお客さんもいる。

「着ている本人にとって、いかに便利かが大事。だからオーダーメイドも大切にしたい。デザイン性よりもシャツがその人に活用されることにこそ萌えます」。

実は、ライターKもモリカゲシャツの愛用者の一人だ。自分に寄り添ってくれるシャツは、名もない日常を誇らしくしてくれることを、実感する。

(2018年11月12日発行ハンケイ500m vol.46掲載)

デザインアイテムの一つに「ウラモリカゲシャツ」がある。縫い方をあえて簡単にしたり生地の耳を使ったり「ウラ技」の効いたシリーズ。

モリカゲシャツ 京都店

京都市上京区河原町通丸太町上ル桝屋町362-1

▽TEL:0752417746

▽営業時間:11時~19時

▽定休:水曜

▽HP: http://mrkgs.com