ハンケイ5m

「マイノリティに関する問題は、多岐にわたります。どの問題も、まずは知ることが大事」

多様な価値観を発信する実店舗 「ハンケイ5mショップ」運営管理者
京野朱莉(きょうの・あかり)さん

京都市中心部の四条烏丸、からすま京都ホテル1階にある「ハンケイ5mショップ」。店内には、障がい者福祉施設でアーティストと利用者が一緒に制作したアート作品をはじめ、本誌『ハンケイ5m』が掲げる「多様な価値観に触れる」という視点で選んだ幅広いプロダクトが展示販売されている。
2023年1月にオープン1周年を迎えた同店は、これまでに、車いすでも楽しめる抹茶体験やアーティストとのコラボ展など、様々なイベントを開催してきた。原点にあるのは「障がいがある人たちが、社会に出るための接点を作りたい」という思いだ。運営管理者を務めている京野朱莉さんに、これからの「ハンケイ5mショップ」が目指すものと、取り組みにかける思いを聞いた。

––「ハンケイ5mショップ」は、本誌『ハンケイ5m』のスペシャルアドバイザーでもある株式会社アドナースが運営するアンテナショップです。個性豊かなプロダクトを通して、障がいがあるアーティストの魅力を発信しています。京野さんは昨年11月から、運営管理者として「ハンケイ5mショップ」に携わっていらっしゃるそうですね。

京野:はい、「この場所をもっと盛り上げていくために、自分がやりたいことを実現していい」と言われ、まだ入社2年目なのですが、運営管理者を務めることになりました。それまではアドナースの放課後デイサービスで、子どもたちの支援や音楽療法士の補助を担当していました。
私自身、子どもの頃から音楽が大好きだったんです。5歳でピアノを始めて以来、音楽が人生の軸にありました。中学と高校では吹奏楽部に入って打楽器を、大学では軽音サークルでドラムを担当していました。
高校生のときに、音楽療法士の存在を知ったんです。病気や障がいを抱えている人に音楽でアプローチして、その人の力を引き出す仕事です。私も、音楽があったから表現できたことがたくさんあり、音楽をやってる自分がすごく好きだった。「素敵な職業があるんだな」と憧れを抱きました。
大学4年生で就職活動を迎えた時に新型コロナが大流行し、企業の面接が途絶えた時期がありました。その時に友人に誘われて参加した就活ワークショップを通して、「音楽療法士がいる職場が京都市内にある!」と発見したんです。それがアドナースでした。早速電話で連絡し「音楽療法士のそばで仕事を経験したい」と伝え、アルバイトとして働くことを快諾してもらいました。

音楽療法士の演奏を聞くと、いつも寝ている子が起きたり、不慣れな子もタンバリンを振ってみたり。実際の現場は子どもたちのパワーにあふれていました。重度の障がいがあっても、何度も音楽を繰り返すことで変わっていく姿を目の当たりにし、「障がいがある子どもたちの可能性」を改めて感じました。
それまでは、自分が支援を「してあげる」のが仕事だと思っていたのですが、実際は逆でした。打楽器の使い方ひとつでも「そんな鳴らし方できるの!?」と、子どもたちから学びや発見をもらうこともたくさんあります。

––まさに、『ハンケイ5m』が誌面やショップを通して発信している「多様な価値観に触れる」というテーマを体現されているようなエピソードだと感じます。福祉や支援をめぐる関係性をはじめ、マイノリティに対する考えが柔軟に変化する。そんなきっかけを、『ハンケイ5m』を通して広げていけると嬉しいですね。

京野:大学では現代社会学部に在籍し、経済や法律、貧困や民族の問題など幅広い分野に関して学んでいました。その中でフィールドワークとして、北海道の先住民族であるアイヌをよく知る現地の方々を訪ねる機会があったんです。差別や偏見を受けた少数民族が、実際は日本の国際交易における重要な役目を果たしていたという歴史を学び、自分が知らない問題が社会にはたくさんあるのだと再認識しました。
社会的弱者という立場。マイノリティを取り巻く問題について大学で学んだことが、福祉の道を選んだ大きなきっかけとなっているかもしれません。
ジェンダーや貧困、SDGsやLGBTQ(性的少数者)など、マイノリティに関連する問題は多岐にわたります。でも、どの問題についても、まずは当事者の気持ちや、過去にどんなことがあり、現在どんな状況であるのかを知ることが大事だと思います。そんな情報がなければ、その問題について考えることもできないと思うのです。

––「ハンケイ5mショップ」というリアルな空間で、実際にプロダクトを手に取ってもらうことで、さらに伝わる思いがあると思います。『ハンケイ5m』の誌面でも、ひとりひとりの世界が広がっていくような情報を届け続けたいです。

京野:ありがとうございます! 私自身、アドナースに入社し、障がいがある子どもたちと実際に関わる中で、支援や福祉についての考え方が大きく変わりました。だからこそ、社会の中には「障がい者だから働けない」という意識がいまだに根強くあるという前提で、私たちにできることを考えたいと思っています。
障がい福祉の現場で働いている私たちだからこそ、伝えられることがあると思っています。「支援者が、当事者から学ぶことの方が多いんだ」「障がいがあろうとなかろうと、誰もが自分らしく働いて、生きていくことができるんだ」。アート作品やプロダクトを紹介することで、そんなメッセージを「ハンケイ5mショップ」から発信していきたいです。

(2023年4月5日発行 ハンケイ5m vol.7掲載)


ハンケイ5mショップ
京都府京都市下京区二帖半敷町652 からすま京都ホテル1階
営業時間:平日10:00〜18:00、日曜10:00〜18:00
定休:火、木、土


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▽ハンケイ5m公式インスタグラム⇨https://www.instagram.com/hankei5m_official/


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