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学生と企業、垣根超え「シューカツ」を考える。スーツ禁止、コント鑑賞…京都発『はたらくおとなと、縁側で話す会』初開催

「働くこと」について、学生と企業が本音で語り合うイベントが8月30日、京都市上京区のKBSホールで開かれた。『はたらくおとなと、縁側で話す会』と題して、企業4社と、就職活動を控えた学生ら34人が参加した。縁側に並んで座るように、学生と企業が横並びで会話を交わし、お互いの理解を深め合った。

就活情報誌『おっちゃんとおばちゃん』を発行するunion.a(ユニオン・エー、京都市)が主催した。同社の20代スタッフが中心となり、就職活動に対して学生が抱いている悩みを解消しようと企画し、初めて開いた。
「業種・エリア・職種で検索しても、企業の違いが分かりにくい」「自分の価値観に沿った仕事を選びたいのに、どう選んだらいいかわからない」。そんな学生たちの悩みに応えようと、「少ない数の企業を深掘りする」新しいスタイルの就活イベントを目指した。働くことについての疑問や違和感について考え、質問を具体化するため、事前に学生たちとワークショップを行った。

参加する学生と企業担当者には「スーツ禁止、私服参加」を推奨。「インターンの服装自由」や「エントリーシートのガクチカ(学生時代に力を入れたこと)」など就活の悩みや「あるある」を学生たちが演劇で表現する「コント(⼨劇)」を上演した。形式に縛られない自由な雰囲気の中で、学生と企業が「就職の本音」を語り合った。

企業は、株式会社大興製作所(京都市)、株式会社福井製作所(大阪府枚方市)、ダイドードリンコ株式会社(大阪市)、株式会社Macbee Planet(マクビープラネット、東京都渋谷区)の4社。
京都大学、同志社大学、京都橘大学、花園大学、京都芸術大学、神戸大学、京都府立大学、京都産業大学、大阪公立大学、立命館大学、京都文京大学、関西学院大学、京都女子大学、龍谷大学、京都芸術デザイン専門学校の学生ら計34人が参加した。学生たちは4つのグループに分かれ、各企業の人事担当者や代表取締役と20分間のフリートークを行った。

学生からは「何を大切にして仕事を選べば良いか?」「働くことのやりがいは?」「採用面接では学生のどういうところを見ているのか?」など、就職や仕事についての率直な質問が続々と飛び出した。
企業の人事担当者からは「学生さんの方に就職先として選んでもらう立場でもあり、学生さんの主体性を大切にしたい。自分たちの会社に合うかどうか、企業も悩みながら採用に臨んでいる」と、採用活動の本音を打ち明けた。

また、「仕事に向き合う中で、好きなことが新たに見つかることもある」「自分から能動的に動くことが、自分に適した仕事と出会うきっかけになる」など、社会人として働く中で得た経験からアドバイスしていた。

イベントの司会は『ハンケイ500m』『おっちゃんとおばちゃん』編集長でunion.a代表の円城新子氏と、サウンドロゴクリエイターで同志社高校現役教師の原田博行氏が務めた。原田氏が製作した参加企業のサウンドロゴを、ギター1本の弾き語りで披露した。

(取材/文=龍太郎、写真=辻正美)


株式会社大興製作所
代表取締役社長 須田真通さん

学生気分に戻った感じで、純粋に楽しかったです。学生さんそれぞれが、働くことに対していろいろな悩みを持っているんだと改めて知りました。企業に対し、こちらが思う以上に高いハードルを感じているようです。もうちょっと本音で話せる環境や、企業と学生さんがお互いのことを良く知り合うためにどうすれば良いかを考えることで、就職活動のあり方も変わってくるのかなと思います。

株式会社福井製作所
代表取締役 福井洋さん
学生さんによる就活コントは等身大の悩みを題材にしていて、とても良かったです。学生さんとのアイスブレイクでもコントが話題となって、その後の会話が弾みました。参加されている学生さんたちも能動的な方が多く、たくさんの質問を頂き、話が尽きませんでした。「ここは縁側だ」とイメージすることで、学生さんたちと近い距離で語り合うことができました。今後もぜひ、シリーズ化してほしいと思います。

ダイドードリンコ株式会社
人事総務部 人財開発グループ 早稲田拳さん
学生さんから「好きなことを仕事にしていくために、どうすれば良いか?」という話が出たのですが、個人的には「仕事をやる中で、自分の好きなところを見つけていく」という視点も大事だと思っています。そういう話をフランクな形で話をすることができ、すごくよかったです。次回は採用側から見た「就活あるある」をテーマに、企業の人もコントに参加するのも面白いかもしれないなと思いました。

株式会社Macbee Planet
コーポレートデザイン室 加賀彩乃さん
大人数でざっくばらんに話す機会はあまりないので、とても楽しかったです。コントも皆さんすごく頑張っていて、そこからアイスブレイクに入りやすかったので、大成功だと思います。3回生の方から「自分のやりたかったことがわからなくなった」という相談を受けました。私も人生の先輩としてアドバイスさせてもらったのですが、他の学生さんからも意見が出て、まさに縁側に並んでいるからこそだと感じました。


同志社大学 文学部1年
東出千聖さん
就職活動に対してまだまだ解像度が低かったのですが、参加して一気に解像度が上がりました。企業の面接について、これまで不安なイメージを持っていましたが「自分の素を見せてもいいし、それをぶつけるのが大事だ」と教えてもらえました。

京都大学 総合人間学部2年
松井悠夏さん
企業の方とフランクに話せて、楽しかったです。給与の話や個人の経験談など突っ込んだ話も聞くことができ、かなり参考になるところが多かったです。コントが面白くて緊張がほぐれ、そこから話を始めるネタになりました。

同志社大学 政策学部2年
福島奨さん
私はまだ就職活動が始まっていないので、初歩的な疑問から投げかけたのですが、企業の方がとてもフラットに話してくださいました。これまでは「企業で働いている社会人って固い」というイメージを勝手に持っていたのですが、全然そんなことないんだなと感じました。

立命館大学 食マネジメント学部3年
山野井豪さん
こういうアットホームな企業説明会はこれまでにないので、とても貴重な体験でした。演劇は未経験でしたがコントにも出演しました。大人数のお客さんの前で演じるのは緊張しましたが、とても楽しかったです。本当にやってよかった、参加して良かったなと思いました。

京都芸術大学 文芸表現学科3年
山口楓生さん
普段の就職活動の場では「就活生と採用担当者」という立場を意識すると思うのですが、一人の人生の先輩として話し合うことができました。就職活動のことだけでなく、人生設計や、自分の好きなことをどう達成するかという話も聞けて、すごく安心しました。コントも面白かったです。

【2023年9月4日配信】