
「カフェは、女の人に必要な居場所。カフェがないと、気持ちがリフレッシュできませんよね」
元銭湯をリノベーションした、大箱カフェ。
Hashigo Cafe 店長 杉本孝子
■自分が行きたいカフェが欲しい
京都の西に、まるでファミリーレストランほどに広いカフェがあると、興奮して話すE編集長。半信半疑で編集部一行が間口の狭い引き戸を開けると、奥行きの先にはかき氷小屋、くつろげるこたつ、パリの小部屋、リラックスできる大きなソファ。区画によって雰囲気の変わるカフェ、なんというワンダーランド!
ここ「Hashigo Cafe kyoto」を作ったのは杉本孝子さん。実は、この店は和歌山に次ぐ2店舗目となる。

■「カフェの空間が好きだから」京都に、自分の居場所を作る
杉本さんは京都の伏見稲荷近くで育った。18歳で大阪の大学に進学し、縁あって和歌山に住んだ。海と山の幸に恵まれ、なにより人があたたかい和歌山が気に入って、市内に「Hashigo Cafe」を立ち上げて、9年間経営していた。
「人と人とのつながりの象徴という意味で、ハシゴと名付けました。メリヤス工場をリノベーションした和歌山のカフェは、広くて大好きな空間でした」。
杉本さんは根っからのカフェ好きだ。居心地のよい場を求めて、休みの日はあらゆるカフェを巡る。どのカフェにもオーナーの思いがあって甲乙つけがたいよさがあるけれど、と前置きして続けた「私が好きなのは、空間です。だから大箱のカフェが好きなんです」。
京都へ戻り、44歳のときにこの常盤近くに移り住んだ。和歌山の「HashigoCafe」はそのままスタッフたちに譲って、手放した。京都では専業主婦をするつもりだった。
「でも、家の近くに行きたいカフェがなかった。ファストフード店でコーヒーを飲んでも落ち着かない。『自分がしょっちゅう行きたいカフェが欲しい』と思うようになってしまったのです」。

■いろんな女性が集いリフレッシュする姿がうれしい
「自分の居場所としてのカフェが欲しい」、そこからの展開は速かった。かつて銭湯だった物件を内見して即決。決め手は、浴槽に貼られたタイルやシャワー。建物に名残る雰囲気がよかった。杉本さんがHashigoの名がつくカフェを再開するとのうわさを聞いて、各地から大小各種のアンティークのハシゴが届いた。
そうしてできた「Hashigo Cafe」、今や、幼稚園への送迎ついでや昼下がり、多くの女性客が集う場だ。一人でランチを食べながらケータイに見入る学生もいれば、連れだって話に花を咲かせるグループもいる。

「カフェは、女の人に必要な場所。家じゃない居場所として一人で過ごしてもいい。誰かと話す時間がないと、気持ちがリフレッシュできませんよね」。
少しずつ内装に手を加え続けるのが好きだから「Hashigo Cafe」に完成はない、と杉本さん。作り手の感性のままに彩られた空間、カフェで過ごした人たちが、元気になって家に帰っていく。その姿を見るのが、杉本さんの喜びだ。
(2021年5月14日発行 ハンケイ500m vol.61掲載)

Hashigo Cafe
▽京都市右京区太秦青木ヶ原町3-4
▽TEL:0758620845
▽営業時間:11時〜18時
▽定休:水、木
最寄りバス停は「常磐野小学校前」

