
「1着の服から、人生が輝き始める。そのきっかけを作り出せれば嬉しいです」
スタイリスト 広瀬淑子さん
「自分らしく」ファッショナブルなあの人は、いつだってアクティブに、新しい可能性に挑み続けている。ファッションブランド『cawaii』を手がけるワンピースが運営するオンラインの洋服定期便『todoku』と、東京と芦屋にあるオフラインのパーソナルスタイリングを行うサロン『cawalu』で、トップスタイリストとして「心おどる1着」をセレクトしている広瀬淑子さん。「自分にフィットする着こなしが決まれば、背筋も自然にピンと伸びます。1着の服で、人生が輝き始める。そんな変化を生み出すきっかけになればと願っています」と話す。
物心ついた頃から、服に興味があったという廣瀬さん。その原点は、洋服好きな母の影響と、かつて日本中の女の子たちを魅了した「着せ替え人形」だった。
「着せ替え人形の洋服が家にたくさんあったんです。小さい頃は一人で一日中、人形の着せ替えごっこをしているような子どもでした。花柄やレースのワンピースやスカートなど、ガーリーな洋服が特に好きでしたね」
ファッションに対する感度が人一倍高い子どもだった廣瀬さん。自分が身に着けるものの色にも、幼い頃からこだわりがあった。たとえば、小学校の運動会でクラスごとに決められた鉢巻。「ピンクや水色、黄色など鮮やかな色がたくさんある中で、私のクラスは地味な茶色だったんですよ。もうそれだけで、すごくテンションが下がった思い出があります」。
洋服と色に対する廣瀬さんの興味は、10代の多感な時期にますます強くなっていった。でも、身長154センチと小柄な体型だったことで「自分にぴったり合う洋服がない」と感じていたという。
「おしゃれをしたい年齢になって、実際に色々な服を着てみても、なんだかしっくりこない。背の高い友人を見て『あの子は似合うのに、なんで私は決まらないんだろう』と悶々としていました」と振り返る。
小柄であっても、自分らしいファッションを楽しみたい。10代の廣瀬さんが抱いた服に対する思いは、自身の人生を大きく変える原動力になっていく。
大学卒業後、機械工具を取り扱う商社で働きながら、興味のあった色に関する勉強を続けてカラーセラピストの資格を取得した廣瀬さん。その後、結婚、出産という大きなライフイベントを経験し、子育てママとして慌ただしい日々を送っていた。ある日、子どもが通う幼稚園で知り合ったママ友からイベントに誘われた。
「起業したママが集まるお祭りだったんですが、私も以前にカラーセラピストの資格を取得していたので、思い切ってブースを出店してみました。そこで知り合った仲間の勧めでスピーチコンテストに出場してみたら、なんと全国大会まで進んで、いきなり準優勝したんです」。
思いがけない結果に驚きながらも、周囲の仲間に背中を押され、次の年からイベントの実行委員長を務めることに。そこで知り合った知人に誘われてファッションショーを見に行った時、ランウェイを歩くモデルがおしなべて長身の女性であることに、ふと疑問を感じた。
「背の低い女性だけのファションショーを開いたら、どうなるんだろう」。ファッションショーの最中に思い浮かんだアイデアが、廣瀬さんの中でどんどん膨らんでいった。
「ファッションショーを見ながら、『美小柄で大人可愛く、人生のランウェイを歩こう!』という言葉が自分の中に降りてきたんです。ちょうど起業に向けた準備をしていた時期だったこともあり、小柄な女性のためのことをしようと思い立ちました」
早速、自身のブログや、周囲の友人知人に声をかけて「身長155センチ以下の女性」を募り、座談会を開いた。集まった10人ほどのメンバーで2014年5月、小柄な女性限定のファッションショーを横浜市内で開催した。
「ファッションショーが終わった時には、参加したメンバーから『やってくれてありがとう』と言われました。その声を聞いて、きっかけがあれば人は変われるんだな、本気になれば、身長や年齢は関係ないなと確信しました」
小柄な女性のためのファッションショーをきっかけに、改めて服の魅力やファッションの可能性を感じた広瀬さん。顔タイプ診断を取り入れた独自の手法で、「らしさ」を入れた遊び心あるスタイリングの提案をインスタグラムで発信し始める。
廣瀬さんが発案した「背が低いというコンプレックスを強みにして輝いている女性」を意味する「美小柄」というコンセプトは、同じ悩みを抱える女性たちの心に響いた。東京の大手百貨店から声がかかり定期的にイベントを開催するなど「美小柄」の輪は広がっていった。
廣瀬さんがトップスタイリストを務めているオンラインの洋服定期便『todoku』は約100人の、オフラインのパーソナルスタイリングを行うサロン『cawalu』は10人のスタイリストが在籍している。『cawalu』ではヘアやメークも含めたトータルなスタイリングを行っている。体型や年齢によらず、全ての女性が美しく輝けるような「自分らしい」スタイルを提案している。
「かつての私がそうだったように、自分にぴったりの服が見つからず、想像と現実のギャップに悩んでいる女性は少なくないと思います。お気に入りの服が見つかることで、その人自身が輝き出すきっかけを作り出せれば嬉しいです」
「自分らしく」輝く装いから、新しい自分との出会いが始まる。スタイリングで広がる人生の可能性は、素敵なときめきにあふれている。

