TOWA presents 岡田博和ものがたり

vol.07 逆風こそ我が道、不屈の覚悟

2008年のリーマン・ショックから始まった世界金融危機。米国を揺るがした「百年に一度」と言われるほど深刻な影響は、やがて世界経済全体に波及していった。半導体市場も例外ではなく、製造企業各社では事業破綻や製造部門の分離が相次いだ。時代は混迷を極め、TOWAは未曾有の危機に直面していた。
かつてない逆風が吹き荒ぶ中、当時専務取締役だった岡田博和は、開発と営業の統括本部長を任じられる。岡田のバイタリティと度胸を見込んだ坂東和彦会長が、起死回生の望みを託し白羽の矢を立てたのだ。

「私は常々『トラブルはウエルカムだ』と言っています。何事につけても逃げない、覚悟と誠意で臨む。そうすればトラブルは自ずから、好機に変わるのです」。
就任早々、岡田は営業部門のメンバーに対し「利益の見込めない注文は受けるな」と切り出した。「責任は全て私が負う」と断言した岡田の言葉の裏には、自身の覚悟を示すことでメンバー全員のベクトルを合わせる流れを作りたい、という思惑があった。
TOWA創業以来、長年にわたって営業現場を歩んできた岡田は「営業とは、顧客との信頼関係そのもの。営業が見積もりで提示するのは、単に価格の高低だけではない」という信念を持っていた。

TOWAの技術に裏打ちされた確かな製品の価値、同業他社との差別化、顧客の求める納期の実現…。いくつもの要素を総合的に考えた結果が「見積もり」の数字として表れる。岡田の考える「見積もり」とは、単に原価に利益を乗せた数字ではなく、顧客にとっての付加価値をクリエイトする営みに他ならない。
「製品の付加価値は、時代や環境によって常に変化します。我々ものづくり企業にとっての『ものの値打ち』を考え抜くことこそ、営業における最も重要な部分だと思います」。
岡田が投じた覚悟の一言によって、やがて水面に波紋が広がるように、営業メンバーそれぞれの意識が変わり出す。世界金融危機で大きく傷付いた世界経済にも、ほのかな光明が見え始めていた。

LED液晶テレビの普及が本格化し、タブレット端末など新たなデバイスも登場する中、半導体市場の需要は回復へと向かい出す。TOWAは半導体製造装置に加えて、LED分野でも持ち前の技術力を活かし製造装置の開発に注力していた。
そして2011年、TOWAは実に3年ぶりとなる黒字決算を達成する。時代に先んじて付加価値を生み出すべく、現場のメンバーと思いを一つに挑み続けた日々が結実した。
「それまでと同じやり方をしていたら、果たしてここまでの変化を生み出せたか、どうか。結果論にはなりますが、常に覚悟を持って取り組んできたことで、あれだけの厳しい状況が好転したのかもしれない。そのことを、強く感じました」。

天運、と呼ぶべきだろう。TOWA創業の日から常に第一線に立ち続け、営業と開発のどちらの現場にも精通した岡田だからこそ感じ得たものだった。
2012年4月1日、岡田博和はTOWA代表取締役社長に就任する。創業から33年、TOWAの始まりの日を知る岡田は、坂東和彦会長以来の生え抜きトップとして経営の舵取りを担うこととなった。


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