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「伝統と革新」が支える、「京都の日本酒」の新たな可能性(伏見編)

今や国内だけでなく、海外でも「SAKE」として人気が高い日本酒。京都は日本を代表する酒どころとして、長い歴史を持つ多くの酒蔵が魅力的な日本酒を作り続けてきた。
京都知恵産業創造の森が運営するオープンイノベーションスペースKOINでは「伝統とは革新の積み重ね」と捉え、京都の様々な伝統ある営みの中から大切にすべきものをともに考え、これからのイノベーションにつなげようと、「伝統革新調査研究プロジェクト 日本酒業界ワークショップ」を開催。多くの酒蔵が集まる伏見で、日本酒の新しい可能性に挑戦している若手経営者たちと、大学研究者や学生、酒販店、公的機関など多様な立場の参加者が意見交換を行った。
ワークショップを通して改めて見えてきた「京都の日本酒」の魅力と、挑戦を支え続ける「伝統と革新」とは−。参加した山本本家、齊藤酒造、招德酒造の3氏に聞いた。


■相互のリスペクトが伏見の文化


株式会社山本本家 専務取締役 山本晃嗣氏
1677年に伏見で創業し、今年で345年になります。鳥羽伏見の戦いを機に、150年前に名水「白菊水」の湧き出る現在の場所移りました。料理を引き立てる存在として日本酒を楽しんでいただきたいと、45年前に鶏料理専門店「鳥せい」を酒蔵に併設して開きました。また近年は、室町時代の調味料「煎り酒」を復活させるなど、 革新を続けて酒造りに励んでいます。
伏見には多くの酒蔵が集まっています。規模の大小はありますがそれぞれに特徴があり、リスペクトして認め合っている文化があります。お互いの蔵を行き来して醸造工程を見学するなど、相互に切磋琢磨しています。そういった土壌があるからこそ、みんなでトライ・アンド・エラーを繰り返し、それぞれに個性ある挑戦を続けることができています。
京都の日本酒の魅力をさらに発信し、次の革新を起こして行くためには、伏見をはじめ京都の酒蔵全体で知恵と力を出すことが必要だと思います。

■新しい付加価値の創出へ


齊藤酒造株式会社 代表取締役社長 齊藤 洸氏
日本酒は今、大きな転換期を迎えています。国内の人口減少に伴い、飲酒人口も今後大きく減少していくと予測されます。また、アルコール飲料に占める日本酒の割合も時代の変化とともに縮小しており、現在は 7 %程度にとどまっています。
「伝統」とは、守っていくことでなく、変えていくことに意味があると思います。その思いから「日本酒の力で、日本酒ではないジャンルに広げていこう」と挑戦を続けています。フランスのシャンパンの製造技術を応用したスパークリング日本酒の開発も、その一つです。フレンチレストランのワインリストに並ぶような存在を目指しています。
これまでと違う新しい付加価値をどう創出していくかは、日本酒業界全体にとっての課題です。逆に言えば、そこに伸びしろがあります。これからも、今までにないような面白いお酒を作りたいと考えています。

■若い世代に魅力発信


招德酒造株式会社 取締役企画室長 木村真輝氏
日本酒を造るには、原料の米と水、発酵に欠かせない酵母、さらに杜氏の技術など、様々な要素が重要です。京都は酒米「祝」や「京の輝き」、独自の京都酵母、そして伏見の名水があります。招德酒造では、米と米麹のみで作られる「純米酒」 こそ日本酒本来の姿だと考え、昭和40年代からその普及に取り組んできました。京都らしい純米酒をベースとして梅酒や柚子酒などリキュールも手がけています。
伏見は素晴らしい水があり、酒造りの歴史があります。ですが、今回のワークショップを通じて、伏見の魅力を若い方たちに伝えられていないと痛感しました。多くの酒蔵が集まっている伏見という土地、伏見の日本酒を認知してもらえるような取り組みに、さらに力を入れたいと思います。
また、オンラインショップ等での若い方々の購買行動におけるプロセスの変化「購入決定に至るまでの時間が短い」という点にも驚かされました。若者のアルコール離れが進んでいるとききますが、そういったプロセスの変化にも着目していきたいです。


【伝統革新調査研究プロジェクト 日本酒業界ワークショップ(伏見編)概要】
運営:一般社団法人京都知恵産業創造の森、中小企業診断士 大井義雄
参加者:山本本家、齊藤酒造、招德酒造、京都橘大学 経営学部 准教授 丸山一芳氏と学生数名、酒販店、京都府、京都市、京都市産業技術研究所、ジェトロ京都、他

▽KOIN(Kyoto Open Innovation Network)
京都市下京区四条通室町東入函谷鉾町78番地 京都経済センター3階
HP→https://open.kyoto/

KOIN(Kyoto Open Innovation Network)は、新しい一歩を踏み出す人のための「共創の場」です。事業を始めたい、広げたい、応援したい。そんな新しい挑戦を応援するため、フィールドや時代を超え、“京都の知恵と技術”が集まる場所です。ミーティングはもちろん、自身の想いやアイデアを発信したり、自由に活用できます。さまざまなワークショップやイベントも随時開催中です!

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