Touch the ART! (for children)

「本を通して、作家の頭の中を追体験するように」ページの向こうに広がる「アナザーワールド」を体感しよう!

Touch the ART! (for children) vol.2
美術家・田中栄子さん

新しいアートを創り出し、直に触れてもらうことを目的とするTouch the ART! (for children)は、一般財団法人NISSHA財団が支援し、日本写真印刷コミュニケーションズ株式会社が展開するプロジェクト。第2回目となる今回は、美術家の田中栄子さんとのコラボレーションです。

「この世(リアルワールド)」と「あの世(アナザーワールド)」が交錯するような世界観の作品を、版画やペインティング、コラージュなどの技法を組み合わせて表現する。田中さんは「思わず背中がゾワっとするような、自分の中の奇妙な違和感からインスピレーションを得て、作品制作が始まります」と話す。
たとえば雑誌のページをめくっている時、ふと目に入った一枚の風景写真。一見するとありふれた景色の中に、田中さんは「あの世に釣り込まれるような感じ」を見出す。
「写真の場所に実際に行ってみると、最初に感じた妙な違和感は、だんだんと『これは絵になるぞ』という感覚に変化していく。自分がアンテナを張ってないと起こり得ないものかもしれないけれど、雑誌であったり写真であったりという二次元の印刷物がきっかけで、作品化することは多い」と言う。

田中さんは作品制作を進めるとき、着想を得た写真の風景を、トーナルカラーという美術用の色紙を使い、「面」に置き換える作業を行う。
「93色のトーナルカラーを組み合わせて使います。風景を構成している要素をそれぞれ単色の面として置き換えるという制約を課し、画面の色を絞り込んでいく中で、大事な部分が見えてきます」。
今回のTouch the ART! (for children)での大型本の制作にあたり、田中さんは「本というメディアで、私が表現できることは何か?」と考え、「単なる作品集ではなく、作品の元となる素材に触れて、ページをめくることで作家の頭の中を追体験できるもの」を目指した。

最終的に約200ページ、絵画とコラージュ計8点を収めた大型本は、日本写真印刷コミュニケーションズ株式会社の高精細印刷技術によって、田中さん自身も制作段階で気づいていなかった「リアル」を生み出した。
たとえば、田中さんが私物のiphoneSEと百均で購入したマクロレンズを使って撮影した、自身の作品の拡大画像。「網点(あみてん)」と呼ばれる印刷のドットの微妙なズレや、チープなレンズによる意図しない像の歪みまで忠実に再現している。作品の過程で生じるそのようなエラーの中にこそアートの可能性は潜んでいる、と田中さんは感じている。

「自分で撮影している時にスマホの画面で見ても分からなかったミクロの世界が印刷によって表現されていることに、まず驚きました。それらをページの順番や構成を考えて一冊の本としてまとめていく中で、元の作品を超えた遠近感や広がりが生まれていく。本というメディアは、版画から絵画、絵画から写真へと枠を超えて自由に行き来できる、すごい自由な場所だと感じます」と話す。
3月24〜26日に京都市下京区のヴォイスギャラリーで開催するTouch the ART! (for children)の展示では、今回田中さんが制作した2点の大型本を実際に手に取って鑑賞することができる。ページの先に広がっている「アナザーワールド」を、ぜひその目で感じ取ってほしい。

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Touch the ART! (for children) Vol.2
【開催日時】
2023/3/24-26 13:00-19:00

【会場】
MATSUO MEGUMI + VOICE GALLERY pfs/w(ヴォイスギャラリー)
京都市下京区富小路通高辻上ル(仏光寺通下ル)筋屋町147-1

主催:日本写真印刷コミュニケーションズ株式会社
助成:一般財団法人NISSHA財団