TOWA presents 岡田博和ものがたり

vol.06 激変する半導体業界、荒波を超えた先に。

1997年にシンガポールに開設された「TOWA AP(アジア・パシフィック)センター」は、拡大するアジア・太平洋地域の半導体市場で躍進を続けていた。半導体製造装置の開発から販売、顧客のアフターサービスまで一貫して担う海外の中核拠点として、急成長を遂げる2000年代の半導体市場を牽引。TOWAの存在感はますます大きなものとなっていく。
パソコンやデジタル家電が普及し、半導体市場は世界的な広がりを見せていた。新興企業の台頭は企業間競争の激化へとつながり、ビジネス環境もかつてない速度で変化していた。「半導体の性能は、1年半で2倍向上する」とした「ムーアの法則」はよく知られているが、まさに日進月歩の技術革新が求められていた。

独自技術による「マルチプランジャ方式」の開発によって業界標準を確立したTOWAはその後も、半導体の生産数の増減に合わせてプレスモジュールを着脱可能とした「Yシリーズ」、最先端の半導体製品に対応した「コンプレッション(圧縮)成形方式」の新装置と、次々に画期的な製品を生み出していく。
高性能な半導体の大量生産を可能とする「コンプレッション成形方式」の端緒は、岡田博和のひらめきにあった。
「コンプレッション成形という方法そのものは、従来から世の中に存在していた技術です。しかし、半導体製造の分野では一般的ではありませんでした。顧客である企業から技術的な相談を受ける中で、この技術を応用すれば顧客の課題を解決できるのでは、と思いついたのです」。

岡田はさっそく、社内の技術者たちを集めて自身のアイデアを提案し、開発に着手する。こうして、半導体の薄型化や回路の高集積化という技術革新のニーズに応えるべく、2009年にTOWA独自の「コンプレッション成形方式」による新装置が発売となる。
前年の2008年に米国で起きたリーマン・ショックの影響で、世界経済は深刻な落ち込みに見舞われていた。半導体市場も不況の影響を受け、苦戦が続いていた。
逆風が吹く中でも、岡田が拾い上げた顧客の声から生まれた新装置は、世界の半導体製造企業の注目を集めた。目まぐるしく変化する半導体業界の中で、時代の先を見据えた「クォーター・リード」のTOWAの精神が結実した新装置は、新たな業界標準としての地位を確立しようとしていた。

しかし、明るい兆しが見え始めたように思われたのも束の間、時代の変化はさらに激しさを増していく。リーマン・ショックの影響に加えて、約4年の周期で好況と不況を繰り返す「シリコン・サイクル」と呼ばれる景気変動の波が、半導体業界を大きく揺さぶっていた。半導体製造装置を手がけるTOWAも例外ではなかった。この年、業界全体の不況から半導体製造企業が設備投資を控えた影響を受け、TOWAはかつてない苦境に見舞われていた。
未曾有の危機を打開するべく、2010年に岡田は営業本部長の重責を任されることとなる。営業本部での業務初日、集まった営業担当のメンバーを前にして、岡田は開口一番こう言い放った。
「今日より以降、利益の見込めない注文は受けるな。責任は全て、この私が負う」。
TOWAの復活をかけて、岡田は剣が峰に立っていた。


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