きょうの挑戦者たち

京和傘から全国の伝統工芸へ、現代のニーズに寄り添い新たな伝統を生み出す

■西堀耕太郎(にしぼり・こうたろう)さん
1974年、和歌山県生まれ。カナダ留学後、市役所勤務。2004年、29歳で妻の実家である、創業から160年の和傘の老舗・日吉屋を継ぎ5代目となる。その後「伝統は革新の連続」を企業理念とし、和傘の伝統技術を生かした照明器具など新商品を開発、「グローバル老舗ベンチャー企業」を目指す。2008年より海外進出し、現在15か国で展開中。2012年より、日吉屋での経験とネットワークを利用して、日本の伝統工芸の商品開発や販路開拓を支援するTCI研究所(現:日吉屋クラフトラボ)を設立、代表としてさまざまな活動を展開している。西堀さんは「培われた伝統の継承と、時代に合わせる変化。この2つが両輪となり次世代に伝統となるものを創出します」と話す。

今や時代行列や屋外イベントで目にするだけになった、和傘。京都市内にかつて250軒以上あった和傘屋も、現在残るのは1軒。それが京和傘の老舗、日吉屋だ。5代目の西堀耕太郎さんは「伝統工芸の技術を応用して、新しく伝統となるものにつなげたい」と、京和傘の仕組みを活かし、ランプシェードを開発。注目を浴び、今では海外に展開をするまでになった。
きっかけは、西堀さん独自の「気づき」からだった。「京和傘を日光にかざして点検しているとき、和紙を透過するやわらかい日差しが美しかった。これは照明器具になる、と思いました」。

和傘を逆さにした形のランプシェード「古都里」。竹骨の幾何学的ともいえるフォルムと和紙の透過光は、スタイリッシュな照明となって部屋を飾る。また、開閉する傘の機能を応用したペンダント型や床置も人気だ。

西堀さんは和歌山県出身。カナダ留学経験もあったことから、京都人が当たり前に思う光景を「外の目」で見ることができた。それが、衰微する伝統工芸を起死回生につなげたとも言える。
「後に伝統となるものも、当時はその時代のニーズに応えてきた新作。良いものなら広まり、長く使われ、伝統になるんです」。この発想を西堀さんは「伝統は革新の連続」と言い、モットーにする。魔除け、庶民の雨具と、時代に応じて革新され続けてきた和傘だが、現代人は「機能を越えた情緒的な美」に惹かれているそう。だからこそ、様々な素材や色柄のコラボ商品や、照明などの新商品を世に送り出す。

夏にしか出番のない扇子。扇骨の素材が竹であることから、水分を吸う特徴を活かし、アロマオイルを吸い上げるスティックとして取り入れ、ディフューザーに。西堀さんは、伝統工芸品ごとの特質を見つけ出すことに関わり、新たな可能性に挑戦している。

京和傘同様に、素晴らしい伝統工芸が日本の各地に残っている。「それらを応用すれば、現代のライフスタイルに合うものができるはず」。そう考えた西堀さんは、2012年に日本の伝統工芸を支援する研究所を設立。扇子からルームディフューザーを開発するなど、多くのプロジェクトがスタートした。「職人が紡ぐ伝統工芸の素晴らしさを世界中の人々に感じてほしい」。西堀さんはまさに次の伝統を生み出す挑戦をしている。

(2023年1月10日発行ハンケイ500m vol.71掲載)

<共同編集長コラム>
京和傘を光にかざした時の美しさに気づき、伝統工芸の技を活かしたランプシェードを開発した西堀耕太郎さん。製品の機能ではなく、使う人にとっての心地よさや「美しい」と感じる心の動きに着目する発想は、まさに「意味のイノベーション」の実践です。「伝統は革新の連続」とするならば、伝統工芸に「新しい意味」を見出そうとするイノベーションの挑戦こそが、伝統を支えているとも言えます。西堀さんは京都から世界へ、伝統工芸の「新しい意味」を発信し続けています。(龍太郎)

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私も挑戦者です

「伝統は革新の連続」をモットーに、新たな伝統を生み出すことに挑戦する西堀さんと同様に、三洋化成も化学のちからで化学の枠を越えてイノベーションを起こし、持続可能な社会づくりに挑戦しています。

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