
時代に合った美しい日本の宝「京町家」を創造し、次世代につなぐ
■祗匠会 内藤朋博(ないとう・ともひろ)さん
1978年、内藤工務店5代目として京都に生まれる。高校卒業と同時にプロサーファーを目指すが挫折。父の仕事を手伝ううち大工としてのプロ意識に目覚め、親方のもとで4年間修業。28歳のとき父が他界して店を継ぐ。その後宮大工と出会い、伝統技術に魅了される。36歳で受けたコーチングをきっかけに、京町家を保全する会社として改めて(株)祗園内藤工務店を設立。さらに2020年12月、町家を建設できる職人の育成を目指し、NPO法人祗匠会を設立。内藤さんは「造る人と住む人の双方がいてこそ、京町家を未来に遺すことができます」と語る。
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京都の景観に欠かせない京町家は、2022年までの50年間で激減した。伝統技術を伝え、時代に合った京町家づくりに取り組むのが祗匠会(ししょうかい)代表の内藤朋博さんだ。
「京町家は職人の技術の結晶です。大工、左官、瓦、建具。さまざまな職人の技術が継承されないと修理ができません。それぞれの技術を習得した職人を育成する必要があるんです」と語る内藤さんは、祗園の大工を継いだ5代目。若い頃、塗装の棟梁の筆さばきに感動して大工になろうと決意した。

宮大工をはじめ凄腕の職人たちとの出会いを経て、「彼らを講師に、町家を一から造れる職人を育てよう」と2020年、NPO法人祗匠会を立ち上げた。そのきっかけの一つが、頻発する災害のニュースだ。「もし京都に地震が起きたら、倒壊した京町家を直せる人材はいるのか」という危機意識が内藤さんの背中を押した。
内藤さんは「京町家は日本の宝です」と言い切る。観光資源や景観の意味だけではない。
「京町家の素材は木材、竹、土。すべて日本の国産、天然のものです。京町家の活性化によって、林業に活気が出るといいなと」。

建築材は輸入木材が8割を占めるが、昨今の円安で国産木材の需要が増えた今がチャンスと目を輝かせる。2020年から活動を始めて2年目。内藤さんが大切にするのは職人の成長だ。彼らの技術が最も伸びるのは修繕よりもゼロからの建設と気づいた内藤さん、「次の目標は、時代に合わせた町家の新築です。住みやすい町家なら、住む人が増えますし、京都の美観も継承できます」。
美しい京町家を次世代につなぐために。内藤さんは挑み続ける。
(2022年11月10日発行ハンケイ500m vol.70掲載)
<共同編集長コラム>
「うなぎの寝床」とも呼ばれる京町家は、京都の暮らしに根ざしたさまざまな文化が集積しています。「京町家は日本の宝」と語る祗匠会・内藤朋博さん。内藤さんの言葉通り、京町家には日本の伝統文化と、そこに息づく自然への敬意に満ちた精神が満ちています。ただ、京都観光の人気が高まる一方で、活用策が見出されず取り壊される京町家も少なくありません。伝統の技術で、新しい時代を築く。内藤さんたちの挑戦が、これからも京都の歴史を紡ぎ続けます。(龍太郎)
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私も挑戦者です
時代に合った美しい日本の宝「京町家」を創造し、次世代につなぐことに挑戦する祗匠会の内藤さんと同様に、三洋化成も化学のちからで化学の枠を越えてイノベーションを起こし、持続可能な社会づくりに貢献しています。
三洋化成工業株式会社

