TOWA presents 岡田博和ものがたり

Vol.04 いざ「半導体新時代」、揺るがぬ理念を羅針盤に

1993年7月、TOWAの研究開発の成果が結実した新型の自動モールディング装置1号機が完成する。半導体の生産数の増減に合わせてプレスモジュールを着脱可能とした、世界初となる装置だった。
試作機であるプロトタイプに与えられた開発コードネームは「与作」。やや風変わりなこの名前には、北島三郎の歌声で大ヒットした歌謡曲に登場する木樵のように、ひたむきに働き、日本から世界へ「トントントン」と広まってほしいという、開発者たちの願いが込められていた。

90年代のパーソナルコンピューター(パソコン)の普及は、CD-ROMやプリンターなどパソコン周辺機器の新たなニーズを生み出した。通信機器では携帯電話の小型化が進み、世界の半導体需要は急速に膨らみ続けていた。半導体の大量生産を実現するため、製造メーカーは従来の垂直統合型から、設計と生産をそれぞれ別の企業が担う水平分業型へと移行する。生産ラインの完全自動化を目指す動きも加速し、さながら「半導体新時代」の到来を告げていた。
業界の構造が大きく変わる中、世界では韓国や台湾の半導体製造メーカーが存在感を増していた。それまで営業担当として数々の顧客と向き合ってきた岡田博和は、今度はシステム責任者として製造開発の舵取りを任される。

プロトタイプ「与作」は、韓国の三星電子(サムスン電子)で約1年のテスト運用が行われた。その後、システム責任者である岡田を筆頭に、TOWAの技術陣による百数十項目に及ぶ改善を経て完成にこぎつける。「与作(YOSAKU)」の頭文字を冠した「Yシリーズ」として投入された新型の自動モールディング装置は、半導体新時代における顧客の要請にいち早く応え、国内外で高い評価を獲得していく。
「『Yシリーズ』は発売以降、韓国の三星電子や現代電子産業(現・SKハイニックス)で次々と採用されました。生産量の増減に応じた稼働を、これ1台で手軽に実現できるという開発コンセプトが高く評価されたのです」。
「Yシリーズ」の反響に触れた岡田は「世界を変える装置になる」と確信する。生産体制の水平分業化の進展は、半導体の回路を作る「前工程」と、半導体を組み立てる「後工程」を、それぞれ別の企業が行うことを意味する。生産量の変化に柔軟に対応できる「Yシリーズ」は、設備投資を抑えながら多様なニーズに対応したい「後工程」の企業にとって、願ったり叶ったりの存在となるはずだー。

営業を通して常に顧客の声を聞き、言葉の内にあるインサイトに肉薄してきた岡田は、そう考えた。半導体製造の水平分業化の波がアジア圏に広がる中、韓国に続いて台湾でも「後工程」を手がける企業が現れる。後に半導体組み立ての分野で世界最大の企業となる「ASE」だ。
「それまでにもTOWAの別の製品を提案していたんですが、いまいち反応が良くなかった。そこで、私がシステムの責任者として『Yシリーズ』を直接プレゼンしようと、台湾へ飛びました」。
岡田の提案は狙い通りにASEの経営幹部の心を掴み、まさしく「トントン拍子」で受注の話がまとまった。これを皮切りに、TOWAはアジア圏のシェアを着実に獲得していく。顧客との対話を通した「ものづくり」の実践。「半導体新時代」にあっても揺らぐことないTOWAの理念を羅針盤に、海を越えて次なる挑戦が始まった。


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