
未利用の食品を、支援が必要な人に届けたい! 命をつなぐ「フードバンク」を京都に定着させる挑戦
■澤田政明(さわだ・まさあき)さん
1966年、京都生まれ。高校中退後、オートバイ・レーサーに。以降、中国でアパレル、飲食事業を展開したが、体調を壊して帰国。東日本大震災を機に人助けとなる事業をしたいと、食品・物流にくわしい経歴を活かしてフードバンク設立を目指す。2015年「セカンドハーベスト京都」を設立。「困っている人に手を差し伸べたい」と、「フードバンク」「食のセーフティーネット」「こども支援プロジェクト」「食品ロス削減啓発事業」「フードパントリー(食品庫)」の5つの活動を、登録スタッフとともに実施。「家庭で余った食品を集める『フードドライブ』を京都生協ほかで実施中。ぜひ寄贈をお願いします!」と澤田さんは話す。
「認定NPO法人セカンドハーベスト京都」のホームページはこちらから(外部リンク)
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家庭で食べられるのに捨てられる食品や、小売店で販売期限切れにより廃棄される「食品ロス」は年間522万トンにも上る。捨てられる前に寄贈してもらい、必要とする団体などに届ける事業が「フードバンク」だ。これを京都で展開するのが「認定NPO法人セカンドハーベスト京都」の澤田政明さん。今、特に重点を置くのは、京都初の試みである「こども支援プロジェクト」だ。

「かつて子ども食堂を運営し、食に困って来る子はほとんどいないと気づいた」と澤田さん。メディアのミスリードなどもあって「子ども食堂=貧しい子どもだけが行くところ」と誤解する人もいると知った。また「夏休み明けに痩せて登校する子どもたちがいる」という話も教育関係者から聞いた。そこで支援が必要な家庭に食品を届けるため、京都市・八幡市の教育委員会の協力を得て、食品寄贈・資金寄付を募り宅配便で届けている。2018年に159世帯で始まった支援は、宇治市も加わり本年は760世帯となった。

セカンドハーベスト京都は「食のセーフティネット」や「フードパントリー」など、他にも食支援につながる活動に積極的だ。
「食は命をつなぐもの。食に困っている人に、さまざまな方法で的確に届けていきたい」。
ようやく企業や府民、行政の理解が深まり、食品寄贈の協力も増えてきた。しかし京都府の生活保護世帯・ひとり親家庭は、ここ10年で3割増加した(※)。
「フードバンクは京都でまだ定着したとはいえません。おなかが減ってつらい人たちを支えたい。食に困る人がいなくなることが最終目標」。そう話す澤田さんの挑戦は続く。
※「第2次京都府子どもの貧困対策推進計画」(令和2年)より
(2022年9月10日発行ハンケイ500m vol.69掲載)
<共同編集長コラム>
全人口の可処分所得の半分である127万円に満たない年収の世帯で暮らす人の割合を示す「相対的貧困率」という指標があります。厚生労働省が2018年に行った調査によれば、「相対的貧困率」は15・4%に上り、国民の6人に1人が、いわゆる「普通の暮らし」が困難な状況にあることが浮き彫りになりました。少子高齢化の進展、非正規雇用の拡大による所得格差、ひとり親家庭の増加。私たちが生きる社会は今、いくつもの課題を抱えています。食を通した支援に取り組んでいるセカンドハーベスト京都の澤田政明さん。「食は命をつなぐもの」という信念は、困難に直面している人たちを足元で支えています。(龍太郎)
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私も挑戦者です
三洋化成は毎年セカンドハーベスト京都に食品を寄贈しています。挑戦を重ねる澤田政明さんと同様に、三洋化成も化学のちからで化学の枠を超えてイノベーションを起こし、持続可能な社会づくりに挑戦しています。
三洋化成工業株式会社

