
「飲食が一番、罪悪感がない。食は誰にも必要だし、気持ちが楽なんです」
オーガニックなフードとドリンクを揃える自然派カフェ。
chocho. kobaru_coffee オーナー 宮崎美左
■大手チェーンにはできないことがしたい
「あの頃は、世間知らずで横柄だったかもしれません……」。当時を振り返り、申し訳なさそうに笑う。30年前の京都に伝説的なカフェ、「カフェサリュ」があったのを覚えているだろうか? そこはまるでパリ、完全無欠のオシャレ空間で、当時は間違いなく、京都ではぶっちぎりのカッコいいカフェだった。
当時、隙のないファッションで固めていた宮崎美左さんは高校卒業後、アパレルの会社で勤務。結婚退職し、旧丸善の南側に「カフェサリュ」をオープンした。以降、数十年の長いお休みを経て、宮崎さんはカフェの世界にカムバックした。その理由はこうだ。
「私はアクセサリーも作りますが、アクセサリーは必需品ではない。でも、食は生きるうえで必要だから、商いをしていて一番、罪悪感がない。好きな仕事で、気持ちが楽なんです」。
「chocho. kobaru_coffee」を一言で説明するならば自然派のカフェ。食材にはからだに優しいオーガニックのものを使用している。

■安全なものを提供したい 身をもって体験した自然食
25歳の時、患っていた病気の影響で、倒れて寝たきりになったことがある。自然食に目覚めたのはそれからだ。33歳で出産以来、玄米食を続ける。
「今は化学調味料を摂ると舌がしびれてしまうんです。店では普段、自分が食べているものを提供しています」。
看板商品はオーガニック大国、アメリカから輸入されたヴィーガンソフトクリーム。豆乳スイーツのイメージを変える、コクのある味わいに惚れ込んだ。ソフトクリームと相性のいい食べ物を探してたどり着いたバターミルクパンケーキは全粒粉で、ベーキングパウダーはアルミフリー。バターを練り込んだ生地には、隠し味として塩も少し加える。
からだが喜ぶ味とはこのこと。結構なボリュームにも関わらず、するすると胃袋に収まった。

■完璧を目指すのではなく、個人の店だからできることを
「今はブルーボトルコーヒーに代表される完璧な統一感のあるカフェがある。そこを目指すのではなく、大手にはできないことがしたい」。
宮崎さんが志すのは、イメージが確立された店ではなく、雑多的な店。内装や什器は大半が譲られたものや自分で集めたもので、蚤の市のような雰囲気だ。
「カフェサリュ」を経営していたあの頃、強く握りしめていた「こうじゃないとダメ」というこだわりも、今はなくなった。
「昔は私、すごく尖っていたかも。フランス映画しか観ない人と思われてたみたい。でもね、本当は、『ダイ・ハード』とかも好きなんです!」。
力の抜けた宮崎さん、心身ともに磨きがかかっている。ここからは、彼女の第2幕。
「chocho. kobaru_coffee」はいい意味で隙のあるカフェに仕上がった。
(2020年9月10日発行 ハンケイ500m vol.57掲載)

chocho. kobaru_coffee
▽京都市左京区南禅寺下河原町52-7
▽TEL:0757515202
▽営業時間:10時~18時
▽定休:金
▽chocho. kobaru_coffee 公式HP→https://chochokobaru.com/
最寄りバス停は「南禅寺・疏水記念館・動物園東門前」

