ファッショナブルな生き方

自然の風雨にさらされた鉄に「美の瞬間」を見出す。

圓城順子さんのお気に入り:
錆びた鉄のオブジェ(無題)

「自分らしく」ファッショナブルなあの人は、いつだって自分を表現することが大好き。自分の感性にぴったり合う「お気に入り」のアイテムを手にすれば、個性はますます輝き出す。

素材としての鉄に魅せられ、60歳から造形作品の制作を続けている圓城順子さんのお気に入りは、錆びた鉄を用いた自作のオブジェ。「自然の風雨にさらされて錆びた鉄は、様々な表情を見せる。土に還る前の一瞬の表情に、強く興味を惹かれます」と話す。

■錆びた鉄が物語る時間

作品に用いるのはホームセンターで購入した番線や、廃車になった自動車の部品、道で拾った錆だらけの鉄板など、身近な暮らしの中にある鉄だ。

磨き上げられてメタリックに輝く鉄ではなく、時の流れが積み重なったような鉄を求めて。圓城さんは作品の素材に独自の工夫を凝らす。たとえば番線は、思いつくまま自由な形に曲げてからしばらく野ざらしにすることで、あえて表面に錆をまとわせている。

時間の経過とともに、無機物の鉄もやがて朽ち、自然に還る。そんな遠大な時間をイメージし、古い自動車のギアやパイプを組み合わせ、アッサンブラージュの手法で、オブジェとしてデザインしていく。

■異なる要素をつなぐ「美の瞬間」

制作の根底には、10代のころに出会った「生け花」の思想があるという。「自然のまま、あるがままに素材を生かす」。材料の鉄に、切断や研磨などの加工を行わないのも圓城さんのこだわりだ。

花を生けるように、軽やかな造形美を鉄で表現した作品は、どれも題名を付けず、どの向きから鑑賞するかも決めていない。作品をどう評価するかは見る人の自由な発想にゆだね、ただ自分自身が感じる美の瞬間を表現することを大切にしている。

「自分のイメージ通りに素材を組み合わせられたときが、最高に楽しいんです。次は、錆びた鉄と生きた植物を組み合わせた作品作りに挑戦したいです」。無機物と有機物、静と動。それぞれに異なる要素をつないだ先に、新しい創造の世界が広がっている。

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