
「悔しくて、悔しくて。そのまま帰らずに2週間、砂浜に泊まりました」
閑静な住宅街にあるサーフショップ。
IMAGE SURF オーナー 福島洋介
■死ぬまでサーフィンをやりたい
川は近いが海は遠い京都に、本格的なサーフショップがあるとは、正直、驚きだった。自身でペイントしたというサーモンピンクの館は、丘の住宅街では異彩を放つ。ドアを開けると、サーファーらしく健康に焼けた肌の福島洋介さんが出迎えてくれた。

■うまくいかない だから、ハマった
大阪生まれの61歳。小学4年生の時に父親の仕事の都合で下鴨に越してきた。
和歌山の新宮市に親戚がいたことから、京都育ちでも海は身近な存在だった。
バイクを経てサーフィンに興味を持つったのは「モテるかな」という、いかにも若者らしい理由。デビューは高校2年生。サーフショップのお兄さんに伊勢の海に連れていってもらったのだ。買ったばかりのボードを抱え、意気揚揚と海に繰り出したのだが、結果は散々。
「もう、悔しくて、悔しくて。一緒に行っていた親友と『できるまでいよう』と。そのまま帰らずに2週間、野宿ならぬ『浜』宿をしましたね」。
スケボーは既にマスターしていたし、運動神経にも自信があった。だから、余計に悔しかった。でもたった2週間で波に乗れるようになるほどサーフィンは甘くなく、その翌年からシーズンが来ると海のそばに泊まり込んで特訓を繰り返した。その延長で大学ではウインドサーフィンにのめり込み、就職先も東京の大手デパートのスポーツ館に。接客のかたわら、サーフボードを削り、作成する技術も身に付けた。実家を改装し、「IMAGE SURF」を開店したのは24歳の時だった。

■今度はサーフィンの楽しさを伝える側に
「死ぬまでサーフィンをやりたい。海で死んだら、それでいいかな」と涼しい顔で笑う。冬はスノーボード。横乗り系のスポーツは全部やった。でも唯一、続けられているのはサーフィンだけだ。理由を聞くと「難しいから、楽しい。他に理由はないかな」と答える。たとえばスノーボードならある程度コースが決まっているが、サーフィンのコースは無限だ。同じ波は2度と来ない。すべての波が1度きりだ。
いまも週に1、2回は海へと向かう。始めて40年以上経つが、いまだにハイレベルまではいけないと苦笑いする。
「でも、思い通りにライディングができた時の喜びったらないね」。
忘れられないライディングがある。場所はハワイのサウスショア。7f(フィート)はある美しい波を、いまも鮮明に覚えている。

「店は10万回ぐらい閉めようと思ったね。でも閉めずにいるのは、伝えることが使命だと感じるようになったから」。
自分も昔、そうしてもらったように。知識や技術を教えてくれるサーフショップのおっちゃんとして、今日も店に立つ。
「入りづらいけど、入ってさえ来てくれたら怖くないよ。店も、サーフィンも」。
(2020年7月10日発行 ハンケイ500m vol.56掲載)

IMAGE SURF
▽京都市左京区下鴨森ケ前町27-2
▽TEL:0757814594
▽営業時間:12時~21時
▽定休:水・日曜不定休
最寄りバス停は「高木町」

