〈縁の下の力もち〉

培った目利き力と技術で天然砥石を世に送り出し、京都、そして日本の刃物文化の伝統を支える

■土橋要造さん(つちはし・ようぞう)さん

1950年生まれ。1877年創業の天然砥石採掘加工「砥取家」の代表。子どもの頃から山の採掘場に親しんで育つ。大学卒業後、4年間会社勤めを経て、家業を継いだ。現在、世界トップクラスの天然砥石を扱う砥石業として国内だけでなく世界の関係者からも注目を浴びる。取引先は40か国以上。一般社団法人日本研ぎ文化振興協会代表理事。

神社仏閣などの建築物や京料理といった日本を代表する文化に欠かせない、鉋や包丁などの刃物に今回は注目したい。日本刀の伝統を受け継ぐ日本の刃物は、その鮮やかな切れ味で世界的に知られている。それを支えるのが、刃を研ぐ「砥石」だ。

砥石は、人工砥石と天然砥石の2種に大別でき、日本刀、鉋、和包丁といった精密な刃には、粒子が微細で丸い天然砥石の「仕上砥」が欠かせない。

その天然砥石を自ら採掘・加工している世界唯一の職人が京都の「砥取家」土橋要造さんだ。

「美術品でもある日本刀の、波打つ美しい刃文を出せるのは天然砥石だけ。日本料理も、包丁の切れ味で、見た目と味が変わります」。

家からほど近い山が採掘現場。砥石となる岩石は、かつてフィリピン海プレートから京都に隆起してきた地層に含まれる粘板岩や砥石性頁岩などだ。「今は、世界で京都でだけ採掘されています」と土橋さん。

京都で800年以上の歴史をもつ天然砥石は、2億5千年前にできた地層の、限られた鉱脈でしか採掘できない。土橋さんはどの層のどの位置からそれぞれの刃物にあった砥石が採れるかを熟知している。培った目利き力と技術で、良質な原石を見極め、岩盤から大きく切り出し、各刃物に適した形・表面に整え、砥石として仕上げる。土橋さんの天然砥石を心待ちにする人は多い。

きめが細かく美しい天然砥石。土橋さんの手でひとつひとつ丁寧に加工される。資料館を設立するなど、天然砥石の種類や歴史、研ぐという文化を未来へ伝える活動にも、土橋さんは熱心に取り組む。「京都の恵み天然砥石の魅力を後世に伝えていきたいです」

「この砥石のおかげで自信をもって仕事に取り組める、とのお客さんの言葉が、何よりの励みです」。求めに来るのは、寺社の伝統建築を手がける宮大工や、料亭の料理人といった、地元・京都の人ばかりではない。日本各地や、イタリア、フランスなど海外の需要にも応え、京都の魅力を発信している。

培った目利き力と技術で、天然砥石を世に送り出し、お客さんの思いに応え続ける土橋さんは、京都ひいては日本の、刃物文化を支える縁の下の力もちだ。
(2021年7月9日発行ハンケイ500m vol.62掲載)

<共同編集長コラム>

かつて刀が武士にとっての魂であったように、現代の職人たちにとってそれぞれの道具は、魂を宿す「刀」といえるかもしれません。たゆまぬ努力でその道を極めんとする職人たちを、天然砥石で支える「砥取家」の土橋要造さん。日本国内にとどまらず世界各地の職人たちの精進を、土橋さんの天然砥石が支えています。丁寧に研ぎ上げた一本の包丁、一丁の鉋に宿る職人の魂が、文化を未来へとつないでいます。(龍太郎)

私も力もちです!

培った目利き力と技術で天然砥石を世に送り出し、京都ひいては日本の刃物文化の伝統を支える砥取家と同様に、三洋化成は暮らしや産業で望まれる 「もっと」に、独自の技術で応え、よりよい未来の実現を目指します。

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