ヤノベケンジの世界から語る現代アート

「タンキング・マシーン-リバース 90年代のヤノベケンジ展」

現代美術作家ヤノベケンジの作品展「タンキング・マシーン-リバース 90年代のヤノベケンジ展」が、京都市左京区岡崎のMtK Contemporary Art(エムティケー コンテンポラリー アート)で開催中だ。今や世界的なアーティストとして活躍するヤノベが1990年にデビュー作として京都で発表した「タンキング・マシーン」を軸に、新型コロナ禍で混迷する今、改めて90年代の道程を振り返る。

タンキングマシーンの展示は、京都ではおよそ30年ぶり。

ガイガーカウンターを取り付けたアトムスーツ、チェルノブイリの遊園地に着想したアトムカー、そして、2019年に再制作したタンキング・マシーン-リバース。機械彫刻をはじめ、ヤノベが20〜30代の頃に作品の構想を書き留めた直筆のノートやドローイングなど数十点を展示している。「『現代社会におけるサヴァイバル』をテーマに制作していた90年代と、今の状況は似通っている。深刻な状況を、前向きに、ポップに生き抜くこと。90年代の作品との出会いを通じて、そんな感覚が伝わればいいのではないか」とヤノベは話す。

ヤノベケンジ(右)と鬼頭健吾(左)はともに、京都芸術大学でアートを教える教育者でもある。鬼頭は「90年代にヤノベさんの作品を見た時の衝撃を、今も覚えている」という

1990年、京都市東山区にあった「アートスペース虹」(2017年閉館)で、ヤノベは初めてタンキング・マシーンを登場させる。そして31年の時間が流れた今、再制作されたタンキング・マシーン-リバースが京都に蘇った。90年代のカルチャーやアートシーンを懐かしむだけでなく、新しい経験としての意味をはらんだ「再会」。展示のディレクションを担ったアーティストの鬼頭健吾は「京都にゆかりのある作家の作品を、京都で見ること。その距離の近さやフレンドシップを大事にした」と話す。「人と人との関係性も含めて新型コロナで私たちの生活が一変した。だからこそ、ローカルに回帰しながら世界に広げていくという視点で、ヤノベの原点である90年代を知ってもらいたい」という鬼頭の思いは、90年代にヤノベの作品に出会い衝撃を受けたという自身の経験があればこそだ。


「タンキング・マシーン-リバース 90年代のヤノベケンジ展」
会期:2021年5月29日〜7月19日
開館時間:10:00〜18:00
月曜休館(最終日の7月19日は開館)
場所:MtK Contemporary Art
京都市左京区岡崎南御所町20-1
https://mtkcontemporaryart.com/