
「人工物と自然物の狭間にあるものに 美しさを感じます」
3つの顔をもつ、新時代のミクスチャー空間。
music, design & arts 芽吹 北川学、北川真依子
■ミュージックが妻、デザインが僕、共有部分はアート
「地元では『変わった子』扱いをされていましたが、この辺りはものづくりをされている方が多いので、やっと仲間に会えた感じがしています」。
自然あふれる滋賀県の伊吹山の麓で育った北川学さんと真依子さん。ふたりはWEBデザイナーとシンガーソングライターというクリエイター夫婦だ。
「実は米原にある中学校の同級生なんです。2クラスだけだったんですけど、中学生の時は話したことがなくて。卒業してから同級生同士が集まる機会があり、それがきっかけで。付き合っていた期間は17 年ぐらいですかね」と、顔を見合わせて照れくさそうに微笑む。

■同じものを見て、そこに宿る美を共有してきた
お互いに古いものが好きで、10代の頃から骨董屋に足を運んでは審美眼を磨いてきた。30歳を過ぎた頃、真依子さんが町家暮らしに憧れて京都に移住。たまたま同じタイミングで大阪の会社を退職した学さんも京都に住まいを求め、同じ屋根の下で暮らすようになった。学さんの事務所があった場所が西陣で、結婚後の新居を探している最中、ご近所さんが教えてくれたのがこの古民家だった。
「床を剥がしたらきれいな土間が出てきたんです。一度は自分たちで改修して、2度目は業者さんにお願いしてリノベーションしてもらって今に至ります」。
これまではシンガーソングライター業のかたわら、真依子さんが骨董カフェを営んでいたが、学さんが撮影用にコレクションしてきた古道具が増えたため、ショップとしてリニューアルすることに。現在は仮営業中の店内にはヴィンテージのアイテムが並ぶが、よくある雑貨店とは少し様子が違う。肩書きにはmusic, design & artsという3つの要素。
「ミュージックが妻、デザインが僕、そして共有部分のアート。雑貨屋とは違うし、なにか、いい言い方ないですかね?」と少し困り顔で話す学さん。
学さんはヨーロッパ、真依子さんアジアのものに心を惹かれることが多いそうだが、共通するのは「寂び」の表情だ。
「昔はふたりとも昭和レトロなものが好きでしたが、年齢を重ねてからは趣味も変わり、侘び寂びに興味が向いてきました。人の手で作られたものが朽ち果てる時というか、人工物と自然物の狭間にあるものに美しさを感じます」。

■ものや映像を通じて人となりを知って欲しい
ショップはショールームとしての役割も担う。日没後は西陣で水墨画を描く作家を招いて撮影したプロモーション作品を漆喰の壁に投影する予定だ。
「窓から中の様子が見えるように、営業も夕方からにしました。ここはものを含めて、自分たちの周辺情報を知ってもらうための場でもある。街中ではこういう発想にはならなかったと思います」。
グランドオープンは4月6日。季節は春、まさしく芽吹きの時だ。
(2019年3月10日発行ハンケイ500m vol.48掲載)

※現在は閉店しています。店舗に関する情報はハンケイ500m掲載当時のものです。
music, design & arts 芽吹
京都市上京区一町目830

