縁の下の力もち

京菓子職人の想いを的確にくみ取り形にした「菓子木型」で、京都の伝統を支える

■堀 和子(ほり・かずこ)さん

明治時代創業の堀九来堂の代表取締役社長。京都生まれの京都育ち。母が堀九来堂の娘で、幼い頃から木型や真鍮型などの製菓器具を身近な存在として育ってきた。三代目の夫や息子の急逝により、現在は娘さんとともに会社を牽引、伝統を守り続けている。

和菓子の中でも特に芸術的な「京菓子」。京都がその本場たる所以は、神社仏閣、京都御所、茶道の家元といった茶の湯の熟達者が、この地に集まっているからだ。それゆえ古くから、菓子司(かしつかさ)が研鑽を積み続けている。

干菓子や上生菓子など、美麗な京菓子を作るのに欠かせないのが菓子木型だ。

その菓子木型を1896年から製造販売するのが、堀九来堂。繊細な意匠が彫られた木型は、それ自体に芸術性を感じるほど美しい。

堀九来堂二代目の見本絵をもとにつくった菓子木型は、一生もの。「30~50年使って厚みがなくなっても木の枠を足せば、菓子職人さんに使い続けていただけます」と堀さん。

「木型には桜を使います。木が硬くて彫りやすく、水に強いんです」と語るのは、社長の堀和子さん。堀九来堂の仕事は、イメージの段階にある菓子職人の想いを的確にくみ取り、緻密な絵で描き出していくこと。これを下絵に、木型職人が彫り上げ、菓子木型ができ上がる。

美術学校出の先代は、その画才で菓子職人のイメージを絵で具現化してきた。今は堀さんの娘がそれを受け継ぐ。下絵づくりには、花や草木、鳥といった題材への深い理解が欠かせない。

「お客さんより目立ったらあかん、それが三代目の夫の口癖でした」。
実は京都の名だたる菓子司が堀九来堂の木型を使っている。茶会や百貨店に並んだ華やかな京菓子を目にして、「あれはうちの型。こんな色の上生菓子になるんだ」と驚く。それがひそかな喜びだという。

堀九来堂の菓子木型でつくられた亀屋則克の干菓子「宝づくし」。小判や小槌など、そのきめ細やかさは見るものを感嘆させる。このような美麗な京菓子を作り出せるのも、堀九来堂の菓子木型あってこそだ。

京菓子が支えるもの。それは茶道をはじめとする、京都の伝統文化だ。季節の移ろいに敏感な、京都の感性のもとで発展した京菓子の美を、堀九来堂の菓子木型は今日も縁の下で支えている。「この文化が続くことを願います」、堀さんはそう付け加えた。

(2021年3月12日発行ハンケイ500m vol.60掲載)

<共同編集長コラム>

目と舌で、季節の移ろいを感じさせてくれる京菓子。茶席に欠くことのできない繊細な意匠の京菓子は、真っ白な懐紙の上でひときわ美しく、特別な時間を彩ります。それぞれの美しい京菓子は、菓子職人の技と、その技を見えないところで支える堀九来堂の職人仕事の賜物です。人と人が語らうことの困難な状況だからこそ、互いを思いやる心の豊かさを大切にしたい。菓子木型から生み出される京菓子のひとつひとつに、一期一会の想いが込められています。(龍太郎)

私も力もちです!

京菓子職人の想いを的確にくみ取り形にした「菓子木型」で、京都の伝統を支える堀九来堂と同様に、三洋化成は機能性化学品を通じて、暮らしや産業のさまざまな分野を支えています。

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