
「紅茶、ヴィーガン、ネコ。いろんな要素が、もっとうまく混ざり合えばいいんだけど」
人と環境に優しいフードを展開するカフェ。
キトゥンカンパニー オーナー 岩井穂積、岩井まさえ
■軽く発信して、真剣に遊ぶ
「自分たちでもよくわからない。紅茶とかヴィーガンとかネコとか、いろんな要素がもっとうまく混ざり合えばいいんだけど…」。
ちょっと楽し気に、岩井穂積さんは自分の店を評する。一見はカフェなのだが、その一方で所狭しと並ぶ手づくりのネコグッズや雑貨、自然派食品も販売。さまざまな要素で構成されている店内を一言で表現するならば、カオスという言葉がふさわしい。

■東日本大震災を機に 深まった食への関心
外国人観光客も少なくないヴィーガンカフェ。以前は紅茶とチャイの専門店だった。
「母親がこの場所で喫茶店をしていたんですが、母の体調が悪くなったので住んでいた大阪から京都に戻って店を引き継いだんです」と穂積さん。まさえさんが大の紅茶好きで、大阪の紅茶専門店で働いていたことから、コーヒーを置かない完全な専門店としてリニューアルオープン。それから2年後の2011年、福島で原発事故が起こった。動物好きな夫婦にとって、アニマルウェルフェアの観点からも、酪農牛の置かれている環境を見過ごすことはできなかった。
「家では飲まないと決めたけど、チャイにはミルクが欠かせない。でも、自分たちが飲まないミルクをお客さんに出したくない。だったら、動物性食品を使わないヴィーガンカフェにしようと。今はミルクの代わりに豆乳を使います」。
それまでに夫婦で菜食主義の生活をしていた経験もあり、スタイルの変更は自然な流れだった。
「僕たちも今は菜食が基本ですが、お肉も食べます。お客さんには月1回でいいから『今日は肉をやめてみよう』という気分の時に来てもらえたらうれしい」。

■店も世界も同じ 多様だからおもしろい
「人だけが繁栄するのではなく、同時に自然も守っていきたい。左京区にあるようなメッセージ性を全面に出している店もカッコいいなぁとは思うけど、強く発信すると衝突してしまう。だから軽く発信して、真剣に遊んでいきたいです」
人になにかを伝えるには、時にユルさも必要だ。それをナチュラルに体現しているおふたり。それにしても、冒頭でも触れたが、店を知れば知るほどに要素がてんこ盛りである。店の印象を話すと、笑いながら「僕たちもどういう店なのか誰かにまとめてもらいたいぐらい」と。
そういえばさっき、穂積さんはチャイにハマるきっかけとなったインドのいいところをこう表現していた。
「それぞれ自分の意見があって、みんな好き勝手やってるのに、世界は回っているところ」。
そう、インドのように多様な価値観が共存する「キトゥンカンパニー」。岩井さん夫婦の価値観がカオスとなったこの店を、さあ、あなたはどう評するか。
(2019年5月13日発行ハンケイ500m掲載)

キトゥンカンパニー
▽TEL:0753441591
▽営業時間:11時~19時
▽定休:日、祝

