<出会う>京都のひと

「自分の心に刺さる経験を味わうことができる。カレー屋は、私の天職」

甘くて辛くて癖になるカレー専門店。
AKADAYA オーナーシェフ 赤田晴彦

■後味に残る、旨み

「『この味、この味、これやった』って、わざわざ来てくれた常連さんがね」。

この名をご存知の方も多いだろう。髙島屋の別館地下でカレー好きを魅了してきた「赤田屋」が西院に。甘くて辛い、一度食べると癖になるカレーの生みの親がオーナーの赤田晴彦さんだ。

「昔から料理が好きで結婚してからもカレーだけは僕が作っていましたね。30代後半でこれからのことを模索していた時にちょうど、友人から「カレーを自慢する会」なるイベントに誘われたんです」。

なんでも、参加したのは30名ほどで、カレーを作ってきたのは料理自慢の10名。なかにはプロの料理人もいたそうだ。

「作り手の肩書きは伏せたうえでの投票だったんですけど、なんと、その会で断トツで一番だったんです。そこで初めて『俺のカレー、いけるねんな』と」。

移転後からスタートした新作、その名も「ボルケーノカレー」980円。焼きチーズを溶岩に見立てた“ 映える”ひと皿。カレーは牛すじカレー730円とハヤシライス730円、ハーフ&ハーフ730円の3種。トッピング80円~で自分好みの味に。

■看板屋の営業マンからカレー屋の主人に

カレー屋の前はサラリーマン。実家の看板屋の営業として父をサポートしてきた。「人と接するのが好き」という赤田さんにとってやりがいのある仕事だったが、京都の景観条例の影響で商売は下火に。そんな時、「赤ちゃん、うちの店で昼間になんかやってみぃひん?」という友人の一言が背中を押した。

「大丸裏でバーをやっている知人だったんです。昼に、そのバーでカレー屋をやってみようと思ったんです」。

そうして始まったカレー人生。2年間の間借りを経て、晴れて四条河原町の地下店舗で独立。10年前、46歳だった。

「インデアンカレー」に影響を受けた自家製ピクルスは食べ放題。季節野菜のピクルスは¥250~。

■旨みを重視した日本人好みのカレー

一口目は甘く、そしてじわじわと広がる辛み。レシピは素人だった時代からほとんど変わっていないそうだ。

「肉は黒毛和牛のすじ肉。玉ねぎは普通のカレー屋の3倍ぐらいは使っています。目指すのは、後味に旨みが残るコクのあるカレー。日本はだし文化。おいしいカレーも原点は『旨み』だと思います」。

忘れられないエピソードがある。四条河原町時代、高齢のご婦人が家族連れ来店されたそうだ。

「そうしたら食後に『私、80年以上、生きてきたけど、ここのカレーが一番おいしかった』って涙流しながら言わはったんです。こんな風に自分の心に刺さる経験を味わうことができる。カレー屋は私の天職だと思いました」。

すでにお気づきの方もいるかもしれないが、赤田さんのカレーの原風景は、大阪屈指、甘さと辛さが共存するカレーの名店「インデアンカレー」にある。「大好きで月に1回は行ってましたね。インデアンを越えるカレーはないと思います。でも前に妻と行った時、『私、あんたのカレーの方がおいしいと思う』って。『ほんとか? お世辞抜きでか?』って何度も聞きました。うれしくて」。

店を出た後も舌に残る、旨みの余韻。癖になるカレーがここにある。

(2020年3月10日発行ハンケイ500mvol.54掲載)

四条河原町は地下だったが、西大路三条では地上へ。店名もアルファベット表記に。

AKADAYA

京都市中京区西ノ京三条坊町2-2 サンハイツ西ノ京102

▽TEL:0753546985

▽営業時間:11時半~14時半、18時~21時半

▽定休:月

最寄りバス停は「西大路三条」