<出会う>京都のひと

「人と何かをつなげる場を作りたい。じゃないと、俺が生きてる意味ってない」

京都初、N.Y.スタイルピザ専門店。

PIZZA MONSTAR(旧 GOLDEN ROCCA CRISPY)オーナー 新井ポテト

■飲食店をやってる自覚がない

ポテトというツッコミ待ちの愛称といい、ひげもじゃの風貌といい、明らかにタダモノではない。

栃木県宇都宮市出身。今回紹介する「PIZZA MONSTAR(旧 GOLDEN ROCCA CRISPY)」のオーナー、新井さんには、もうひとつの顔がある。元バンドマンで、アーティストのマネージメント会社の代表。そんな彼がなぜ、飲食の世界へ?

ビッグサイズのピザを1ピースで販売するのがN.Y.スタイル。直径約50センチと巨大だが食感は軽く、あっという間に胃袋に収まる。テイクアウトしたくなる専用ボックスはオリジナル。マルゲリータなど10種ほどで1ピース390円~。

■手痛い失恋から、音楽に進路変更

時計の針を9年前に巻き戻す。立命館大学5回生の時、いわゆる大失恋から運命の歯車は回り出した。

「彼女との将来を考えて、公認会計士の資格を取るために勉強してたんですけど、失恋。やけくそになって、大きいことをして有名になるぞって」。

その時、浮かんだのが中学時代から熱中してきた音楽だった。悲しみをバネに、別れた1ケ月後に自社レーベルを設立。「僕が属するバンド『ハンサムケンヤ』のヴォーカルを売り出したいという想いもありました。彼は天才なんです」。

「ハンサムケンヤ」は配信したアニメーションのMVが世界的に話題となり、1年後の26歳の時にメジャーデビュー。絵に描いたようなサクセスストーリーだが、ことは映画のようには運ばなかった。そのあとは鳴かず飛ばず。これからどうするか……。

そんな時飛び込んできたのが、なじみの飲み屋の閉店話だった。その店の地下に「ハンサムケンヤ」専用音楽スタジオを作らせてもらっていたため、なくなると困る。飲み屋を引き継ぐことにした。

こうして、意図せず飲食の世界に足を踏み入れることになった新井さん。しかしプロデュース力があったのだろう、今や名物居酒屋としてにぎわっている。その評判が広まり、経営することになったのがここ「PIZZA MONSTAR(旧 GOLDEN ROCCA CRISPY)」だ。昨年夏にオープン、京都では初となるNYスタイルのピザ専門店だ。「友人が湘南で有名なピザ屋をしていて、京都にもあったらいいのになぁと。これからもっと楽しくなる予感がある」。

熱したストーンで焼き上げる専用オーブン。注文が入ると温め直して提供される。

■もっと楽しみたい人に「場」を提供したい
新井さんは飲食の形態にこだわらない。「店を経営して『もっと楽しみたい』と思ってる奴がたくさんいるとわかった。だから、人と何かをつなげる場を作りたい。じゃないと、俺が生きてる意味ってないんじゃない?」。

新井さんが目指すのは「隣の人とも仲良くなっちゃうようなピザパブ」。こうさらりと言ってのける新井さんは「PIZZA MONSTAR(旧 GOLDEN ROCCA CRISPY)」を改装、進化させる最中だ。人を楽しませる仕組みづくりには、どこまでも貪欲だ。

アーティストのマネジメントや人に出会えるピザ屋。新井さんには、関わる人を元気にさせる「プロデュース力」という、特異な才能が備わっているのだ。

やはり彼は、タダモノではなかった。

(2020年3月10日発行ハンケイ500mvol.54掲載)

大きく生地も薄いため、要の生地作りには高度な技術が求められる。

PIZZA MONSTAR

京都市右京区西院東今田町20 1F

▽TEL:0757489891

▽営業時間:火〜金 17:0025:00 / 土日祝 11:3025:00

▽定休:月

最寄りバス停は「西大路三条」